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これ以上円高が続けば、日本で働く場所がなくなる?
廃業覚悟の経営者も出始めた「産業空洞化」の足音

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第191回】 2011年9月6日
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円高で大手製造業の15%が2割以上の減益
コストカットが限界ならもう海外しかない

 足もとで急速に進む円高が、わが国企業の収益状況に大きな影響を与えている。

 8月下旬に行なわれた経済産業省の調査結果を見ると、現在の1ドル=76円近辺の円高水準によって、大手製造業の15%が前年対比20%以上の減益になり、それ以外の61%の企業が20%未満の減益になるという。

 さらに、この円高が6ヵ月続くと、同じ大手製造業の32%が20%以上の減益、47%が20%未満の減益に落ち込むと見られる。

 それに対して、多くの企業はコスト削減で対応するとの方針を立てているものの、コストの切り詰めには限界があり、今後、海外からの部品調達や、海外の生産拠点拡大を行なわざるを得ない構図が浮き彫りになる。

 もともとわが国は、すでに人口減少や少子高齢化が進んでいることを考えると、既存商品に対する需要の大きな伸びは期待しにくい。一方、多くの人口を抱えて、高成長を享受している東アジア諸国では、高い需要の伸びが期待できる。

 しかも、それらの国には、安価な賃金水準の豊富な労働力が存在する。企業にとってみれば、海外生産が可能な分野については、海外で生産し、それを需要地に迅速に輸送する方が合理的だ。

 しかも、円高・一部のアジア通貨安という要素が追い打ちをかける。そうした状況を考えると、実力のある企業が海外、特にアジア諸国に積極的に事業展開することは当然のことと言える。これからも、わが国企業の海外部門強化の動きは続くことが予想される。

 問題は、わが国企業が海外展開を強化すると、国内での雇用機会が減る可能性があることだ。労働集約性の高い“組み立て型の産業”の海外移転が進むと、いずれ国内で、そうした産業分野での働き場所がなくなってしまうことも懸念される。

 国内需要の低迷や円高の追い打ちに関しては、大手企業にとっては、為替ヘッジ手法の拡充や海外市場への積極アプローチなど、それなりの選択肢を見つけることができる。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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