英ケンブリッジ大学出版社が、中国に関する大量の論文について、中国当局からアクセス差し止めの圧力を受け、話題になった。国際社会は中国共産党の言論統制とどう付き合っていくべきなのか

論文のアクセス遮断を撤回、
学問の自由を守ろうとしたケンブリッジ

 最近、中国と国際社会、特に西側社会との関係のあり方、および両者の間の付き合い方を考える上で示唆に富む、相当程度において典型的な1つの“事件”が発生した。本稿ではその“事件”を1つのケーススタディとして、中国共産党に対する理解に則った中国社会との付き合い方を改めて考えてみたい。

 まずは“事件”の概要と現状を簡単に記述する。

 英ケンブリッジ大学出版社が、中国研究に関する刊行物『チャイナ・クオータリー』に掲載されていた、天安門事件や文化大革命などに関する315本の論文の中国国内におけるアクセスを遮断するよう、中国輸入当局(Chinese import agency)から要請を受けた。8月18日、同出版社はこのようなやり取りがあったこと、および「その他の学術・教育出版物が中国市場で閲覧できる状態を確保するため」に要請に応じたことを発表した。

 その後、西側社会での議論や同出版社の対処法へのクリティカルな反応・見方などを受けて、同大学の学術上層部まで巻き込んだ審議の結果、「学問の自由」というプリンシプルを守る観点から、21日、同出版社は対象となる論文を自社サイトに再掲載する旨を発表した。8月23~27日、北京で開催されるブックフェアに際して、中国輸入当局と本件に関するミーティングに臨む直前に下した決断であった。

 決して驚かされるような事件ではなかった。