腰痛、肩こり、手足の関節の痛みなどに悩む人は、年齢を重ねるごとに多くなる。厚生労働省の調査でも、病気やケガの自覚症状でもっとも多いのが、男性は腰痛、女性は肩こりとなっている(平成22年「国民生活基礎調査の概況」)。
骨や関節の痛みはただちに命に直結するものではないが、悪化すれば日常生活を送るのもままならず、健康寿命を損なう要因にもなる。骨や筋肉など、いわゆる運動器と呼ばれる部位の治療は整形外科が専門ではあるが、症状緩和のために、はり・きゅう、マッサージ、整骨院・接骨院などに通っている人もいるだろう。
こうした治療院の中には、「各種健康保険、使えます」といった看板をかかげているところもある。実際、健康保険でマッサージなどにかかって、負担を抑えながら健康管理に活用している人もいる。
しかし、はり・きゅう、マッサージ、整骨院・接骨院で受ける施術が、すべて健康保険の対象になるわけではない。そこで今回は、こうした施設では、どのようなときに健康保険が使えるのかを見ていきたい。
はり・きゅう、マッサージは
医師の同意書や診断書が必要
健康保険を使える病院や診療所などでは、事前に厚生労働省に届出を出し、「保険医療機関」の認定を受けている。保険医療機関の指定を受ければ、病院や診療所で行われる治療のほとんどは健康保険が適用され、患者はかかった医療費の3割(70歳未満の場合、以下同)を自己負担するだけで医療が受けられる。
ところが、厚生労働省は、はり・きゅう、マッサージ、整骨院・接骨院を保険医療機関とは認めておらず、「やむを得ない」と認めた場合のみ健康保険を使えることになっている。そのため、健康保険で治療できる病気やケガの種類は限定的で、医療費の支払いも病院や診療所とは違う方法がとられている。
<はり・きゅう>
「鍼灸院」という看板を出していれば、どこでも健康保険が使えるわけではない。はり・きゅうで健康保険を扱うためには、「はり師」「きゅう師」という国家資格をもった人が行う施術であることが前提だ。対象となる病気は、神経痛、リウマチ、頸腕症候群(首、肩、腕の筋肉や靭帯の痛み、しびれなど)、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症(むち打ち症)の6疾患。「なんとなくだるい」「肩こりがひどい」いった症状で治療を受けても健康保険の対象にはならない。