今や日本人の間では“嫌韓”を語ること自体が珍しいことではなくなりつつあり、インターネット上には、「韓国と国交を断絶するべき」「韓国人を入国させるな」など“日韓断交”論を賛美するコメントが目につくようになっている。だが、こうした主張に対して「合理性がまったく見当たらない」と警鐘を鳴らすのは国士舘大学21世紀アジア学部教授で経済学者の平川均氏だ。
韓国にいらだつ日本
中東では近隣諸国と断交例もあるが…
「やれやれ、困った国だ…」。 2012年の天皇陛下謝罪要求、同年の対馬仏像盗難事件、15年の慰安婦問題日韓合意に反する少女像設置、今年に入ってからもACL済州暴行事件、徴用工問題など、近年、韓国関連のニュースが流れるたびに、そんなため息が多く聞こえてくる。確かに韓国の行動は、日本をいらだたせるものが多い。
世界に目を転じれば、周辺国と断交に踏み切った例は確かにある。今年6月には、サウジアラビアをはじめとする中東・アフリカなど9ヵ国が、カタールと国交を断絶した。今のところその影響は限定的だが、仮にこれが日韓の間で起きた場合、日本にどんな影響があるのか、経済面にフォーカスして検証してみよう。
世界銀行が集計した昨年の韓国の名目国内総生産(GDP)は1兆4112億ドル(約155兆円)で世界11位、日本は4兆9386億ドル(約545兆円)で世界3位。世界経済の中で重要な地位を占めるこの2ヵ国の経済的依存度を見るには、まずは両国を取り巻く東アジア(ここでは日中韓+ASEAN10ヵ国)の状況を知る必要がある。
1960年代後半から機械産業をはじめとした日本企業は、安価な人件費を求めて発展途上国に生産拠点を移転させていった。韓国にも進出し、現地法人を作り工場を建設して、そこで安く組み上げた製品を欧米に輸出していた。
その後、韓国の技術水準や賃金が上昇していくと、日韓の経済関係も変容していった。それまで日本から韓国へは工業製品を輸出し、韓国からは農産物など一次産品や軽工業品を輸入していた「垂直貿易」の関係が、互いにより高度な工業製品を取引し合う現在の「水平貿易」の形へと変わっていったのだ。
それと同時に日本企業は、より安価な人件費を求めて今度は中国や東南アジアに生産拠点を移すようになる。一方、経済発展した韓国の企業もまた80年代以降になると、東アジア域内の発展途上国に進出していった。