前回に続き、かつて日本銀行の理論的支柱といわれた翁邦雄京大教授のインタビューの後半をお送りする。世界経済の動揺に対して、日本はどのような対応がありえるのかを中心に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド社論説委員 辻広雅文、ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)
日銀の国債の直接引受は
世界に危険なシグナルを送る
――米国の財政・金融政策では、予想外の事態が起こっている。では、もう長いこと量的緩和政策を続けている日本の金融政策については、やりようがあるのでしょうか。
原理的には金融政策についてはゼロ金利になって流動性需要が飽和しても、もまだ二つできることがあります。一つが為替レートへのはたらきかけで、もう一つは信用緩和つまりリスクプレミアムを下げることです。
一つ目の為替レートについては、私は非常に悲観的にみています。1国だけが困難な状態にあれば、外需にすがる余地はあるし、日本がそれに頼ってきた面はある。また、震災直後の円高阻止は世界的に理解を得られた、と思います。
ただ、震災直後と違って、いまは日本の為替介入には、米欧は極めて否定的になっているようにみえます。だから、スイスが無制限介入を発表した、と言っても、日本が、例えば円の押し下げ介入で為替レートを円安にする、というのは考えにくい。