前回に続き、かつて日本銀行の理論的支柱といわれた翁邦雄京大教授のインタビューの後半をお送りする。世界経済の動揺に対して、日本はどのような対応がありえるのかを中心に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド社論説委員 辻広雅文、ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎) 

おきな くにお/1974年東京大学経済学部卒業、日本銀行入行、80年シカゴ大学留学、83年同大学でPh.D取得・日本銀行復帰(金融研究所)、85年筑波大学社会工学系助教授、88年日本銀行復帰(総務局)、92年調査統計局企画調査課長、94年金融研究所研究第一課長、97年企画局参事、98年金融研究所長、06年日本銀行退職、中央大学教授、09年京都大学・公共政策大学院・教授、現在に至る。『金融政策』(東洋経済新報社)『ポスト・バブルの金融政 策』(共著、ダイヤモンド社)『バブルと金融政策』(共著、日本経済新聞社)『ポスト・マネタリズムの金融政策』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

日銀の国債の直接引受は
世界に危険なシグナルを送る

――米国の財政・金融政策では、予想外の事態が起こっている。では、もう長いこと量的緩和政策を続けている日本の金融政策については、やりようがあるのでしょうか。

 原理的には金融政策についてはゼロ金利になって流動性需要が飽和しても、もまだ二つできることがあります。一つが為替レートへのはたらきかけで、もう一つは信用緩和つまりリスクプレミアムを下げることです。

 一つ目の為替レートについては、私は非常に悲観的にみています。1国だけが困難な状態にあれば、外需にすがる余地はあるし、日本がそれに頼ってきた面はある。また、震災直後の円高阻止は世界的に理解を得られた、と思います。

 ただ、震災直後と違って、いまは日本の為替介入には、米欧は極めて否定的になっているようにみえます。だから、スイスが無制限介入を発表した、と言っても、日本が、例えば円の押し下げ介入で為替レートを円安にする、というのは考えにくい。