「円安になるのは日本の金利が低くてアメリカの金利が高いからだ。だから、日銀は円安を止めるために金利を上げるべきだ」と思っている人は多いだろう。しかし、金利を上げると円安になる可能性もある。その理由を解説する。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)
貯蓄・投資・経常収支・資本流出の
関係を理解する
なぜ、金利を上げると円安になる可能性があるのか。
それを説明するためには、まずは2つについて、理解していただく必要がある。面倒だが、少しお付き合いいただきたい。
まず、国際的な取引を考えるためには、GDP(国民総生産)よりGNI(国民総所得)で考えた方が分かりやすい。GNIとは、GDPに海外からの受け取り(日本の投資への配当や金利の支払いなど)を足して、海外への支払いを引いたものである。以下、この受け取りと支払いをそれぞれ通常は財・サービスに限られる輸出等、輸入等に足したものを「輸出等」「輸入等」と書く。
すると
GNI=消費+投資+政府支出+輸出等-輸入等
となる。輸出等-輸入等は経常収支である。
ここで、貯蓄はGNIから消費と政府支出を引いたものだから、
貯蓄=GNI-消費-政府支出
したがって、
貯蓄=投資+輸出等-輸入等(=経常収支)
となる。
すなわち、
貯蓄-投資=輸出等-輸入等=経常収支
である。この式の意味は、経常収支は国内の貯蓄と投資の差額であるということである。これが第1の理解である。
第2に、海外からの受け取りで海外への支払いを賄えていなかったら、それは海外から借金をしているか出資を受け入れていることになる。逆に、海外からの受け取りが、海外への支払いより大きければ、海外に貸し出しをしているか出資していることになるということである。