日本銀行は今年7月の金融政策決定会合で、政策金利の0.25%への追加利上げと国債買い入れの減額計画を決定した。これにより金融政策運営の正常化と、資産縮小に向けた最初の一歩を踏み出したといえる。だが日銀の対応と、海外の主要中央銀行が軒並み展開してきた政策運営との間には、相当な落差がある。日銀は主要中銀の中でも資産規模が突出しているにもかかわらず、国債の発行残高の約5割を保有し、買い入れ資産の質の面でも深刻な問題を抱えているのが現状である。正常化に向けて、責任ある政策運営が求められる。
正常化への取り組みは周回遅れ
主要国の経済情勢を見れば、総じてコロナ危機後の高インフレ局面は峠を越しつつある。この先は、景気の急減速を回避して軟着陸させつつ、インフレ率を目標の2%近辺で安定させる上で、金融引き締めの度合いをどれだけ調整していくかが、日銀を除く主要中央銀行の課題だ。
他方、日本は前年比の消費者物価指数が2%を上回る状況が2年も継続するなか、日銀はマイナス金利政策をはじめとする大規模な金融緩和を続け、今年3月になって、ようやくマイナス金利政策を解除した。その後、外国為替市場における急激な円安の進行に追い込まれるかたちで、6月の金融政策決定会合で国債の買い入れ額を減額する方針を決定している。さらに7月の会合では、国債の買い入れ額を四半期ごとに4,000億円程度ずつ減額し、2026年1~3月期の時点で(従前と比べると半減に相当する)月当たり3兆円程度となる具体的な減額計画を発表した。
日銀のこの一連の決定には、他の主要中銀が行ってきた金融政策運営やその考え方とは相いれない点がいくつも認められると筆者は考えている。
第一に指摘できるのが、資産縮小に取り組むタイミングの遅さだ。日銀の場合、マイナス金利政策の解除が遅れただけでなく、現在もなお国債の新規買い入れを停止できていない。これに対して、海外の主要先進国の中銀はどこもマイナス金利政策を解除した時点、ないしはゼロ金利制約から脱却できた時点で、国債の新規買い入れを完全に停止している。