第一三共、「英社から買収提案」を否定も敵対的買収対策強化の謎アストラゼネカから買収提案を受けたと報道された第一三共 Photo by Masataka Tsuchimoto

 国内3位の大手製薬である第一三共が8月31日夜、短いリリースを出した。「過去に(世界のメガファーマの一つである)英国アストラゼネカ社(AZ)から買収提案を受けた旨の報道がありましたが、そのような事実は一切ございません」。同日午後のオンラインニュースを受けての対応だった。

 このリリースを額面通り受けとる投資家はどれだけいただろうか。企業のリリースはセンシティブなものほど、疑ってかかるのが常。例えば2000年代の国内製薬再編の過程であった山之内製薬と藤沢薬品工業の経営統合報道に対し、両社は直後「会社決定された事柄は無い」などと釈明。だが、ほどなくして合併した(現アステラス製薬)。

「報道では第一三共は昨年断ったとされるが、AZはあきらめていないのでは」。そんな投資家の推測もあり、株価は報道直後、30日終値と比べて約13%上昇した。

 半信半疑は一部の第一三共社員も同じ。ある幹部の解説を披露しよう。

つながる三つの事

 8月31日午後、報道が流れると社内に動揺が走った。“寝耳に水”ではあったが、一部では自然と受け入れられたという。なぜなら最近あった三つの出来事が、今回の報道により一本の線でつながったからだ。