多大な株主価値をもたらす戦略的買収と強調する武田薬品 Photo by Masataka Tsuchimoto

 薬の公定価格である薬価の引き下げ議論などで混沌とする製薬業界で、クリストフ・ウェバー社長CEO率いる国内製薬最大手の武田薬品工業が年明け早々に動いた。9日、がん領域で強みを持つ米製薬ベンチャーのアリアドを約54億ドル(約6200億円)で買収すると発表したのだ。

 この約1カ月の間に、カナダの製薬大手との事業買収交渉が破談になったり、子会社の和光純薬工業を富士フイルムに身売りしたりと、「選択と集中」を進める武田薬品の攻めの姿勢が止まらない。

 武田薬品にとって2011年に約1兆1000億円で買収したスイス・ナイコメッド、08年に約7200億円で買収した米ミレニアム・ファーマシューティカルズに次ぐ3番目の巨額買収。先の2件は長谷川閑史前社長(現会長)時代であり、ウェバー社長CEOになってから最大の大型買収だ。

 買収資金は最大40億ドル(約4600億円)の新規負債と、手元資金で賄う。配当方針に影響はないという。

 武田薬品は消化器系疾患、がん、中枢神経系疾患の3領域に重点を置く戦略を取っている。ピーク売り上げ10億ドル超えを見込める新薬など、がん領域の強化は「見逃すことができない素晴らしい機会」(ウェバー社長CEO)だった。

 武田薬品は自社製品に乏しく、新薬の開発状況を示す「パイプライン」の後期にめぼしいものがないことが課題だった。今回の買収で一定のめどは付く形だ。