「母子家庭で無理と思っていたが、『受験サプリ』(2016年に『スタディサプリ』に名称変更)のおかげで志望校に合格した」。そんな声がリクルートマーケティングパートナーズ社長の山口文洋の元に多数、寄せられている。月額980円でカリスマ講師の授業がスマートフォンで見放題という同社のスタディサプリは、12年のサービス開始以来、有料会員が累計で25万人を突破。全国に5000校ある高校のうち、700校で導入され、高校生の間で抜群の知名度を得ている。
「生まれて初めてリーダーシップを取り、何が何でも事業を成功させたいと思った」と山口は言う。
子供時代は学校の勉強に興味が持てず、「勉強しなさい」と言う母親に反発したこともある。慶應義塾大学卒業後も就職せずに、公認会計士の資格を取るのを口実に、「ぶらぶらしていた」。
3年後に親の堪忍袋の緒が切れ、IT(情報技術)のスタートアップ企業にエンジニアとして入社。「仕事も案外面白い」と感じ始めた06年に、経営危機に見舞われた。リクルートに入ったのも、特にやりたいことがあったからではなく、友人が誘ってくれたためだ。
配属先は高校生向けに大学や専門学校の情報を提供する進学事業。少子化時代の生き残り策を熱く議論する周囲に感化され、次第に「事業愛を感じるようになった」。