拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第30回の講義では、「技術」に焦点を当て、拙著、『意思決定 12の心得』(PHP文庫)において述べたテーマを取り上げよう。

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自慢話をするリーダー

 今回の連載では、「意思決定」の力を身につけるために必要な「直観力」「説得力」「責任力」という「3つの能力」について述べてきたが、今回は、この「意思決定」という営みの背後にあるべき「優れたリーダーの姿」について述べよう。

 昔、会議の最中に「自慢話」をする上司がいた。仮に田中マネジャーとしておこう。例えば、こうした自慢話である。

「この前のA社に対する営業方針は、正しかった。やはり、時間はかかったが、トップセールスではなく、現場からじっくりと持ち上げるやり方が成功だった」

「あのときB社に提出した企画書は、当社の技術的な能力よりも、プロジェクト・マネジメント能力をセールス・ポイントとして押し出したのが功を奏した」

 会議のときに、こんな話をしばしば聞かされたのである。当時、まだ若かった筆者は、こうした話を聞かされると、「なぜ、田中マネジャーは、こんな『成功した』とか『うまくいった』という自慢話のような話をするのだろう…」と感じていた。

 しかし、あるとき、その田中マネジャーが担当したプロジェクトが、いくつかのミスが重なって失敗に直面したことがあった。

 私は、この「自慢話好き」の田中マネジャーが、このプロジェクトの失敗について、メンバーにどのような説明をするのか、密かに注目していた。田中マネジャーの置かれている立場は、とても自慢話どころではなかったからである。

 しかし、私の予想に反して、田中マネジャーは、早速メンバー全員を集めると、メモを配った。それは、プロジェクトが失敗した原因を分析した詳細なメモであった。そして、田中マネジャーは、メンバー全員にその原因を子細に説明するとともに、マネジャーとしての自分が犯した判断ミスについても明確に認め、さらに反省の弁を述べたのである。

 そのとき、私は、田中マネジャーが、なぜ、プロジェクトが成功したときに自慢話のようなことを言っていたのかを理解した。それは、単なる自慢話をしていたのではなかった。

 彼は、「学習する組織」というものを大切にしていたのであった。