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上海の地下鉄事故、マンション火災の背景に
市民の「政府任せ」な防災意識

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第85回】 2011年10月7日
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 上海のハイウェイの両側に林立するさまざまな意匠のビル群は、現代都市に脱皮した上海を物語るシンボルでもある。あまりの発展の勢いに「乱開発では」と思うこともあるが、それらは「高質な都市環境、高効率なインフラ、高水準な都市管理」――というスローガンを土台に、綿密に練られた都市計画の上に成り立っている。

 中国最大の経済都市として国際経済、金融、貿易、物流の拠点としての性格が与えられ、その過程のなかで、浦東開発が進められ、浦西からは工場が姿を消し、居住区が整備され、交通網が発展し……といった具合に、計画的な都市作りが進められてきたのだ。

 短期的に高度な発展を遂げたという意味では興味深い都市であるし、この上海モデルは多くの専門家の関心を惹きつけてやまない。国内外から多くの人口を引き寄せるのも、上海の街に魅力があってこそだ。だが、筆者は最近、「安全な都市づくり」という視点がいまだ十分ではない、と思うことがしばしばある。

記憶に新しい地下鉄事故だが
今まで大事故がなかったのが不思議なほど

 その典型例が、今回の284人の負傷者を出した地下鉄10号線の追突事故である。そもそも地下鉄にまつわるハプニングは「車両のドアが開かない」「行きすぎてホーム所定の位置に後戻りする」「人が乗降中でも容赦なくドアを閉める」「人を挟んだまま運行する」など、枚挙に暇がない。今まで大事故がなかったのが不思議なくらいである。

 筆者が驚くのは、運転手も車掌も、そしてプラットフォームに立つ駅員らがみんな20代の若手だということだ。「○両目は扉が開かないので、他のドアから乗降してください」とアナウンスするその声は「学生さん?」と思うくらいで、「こんな若い子が車両の運行を管理しているんだ」と“感心”させられることもしばしばだった。プラットフォームに立つ係員もまた“あどけなさの抜けない顔ぶれ”が少なくない。

 案の定、9月27日の地下鉄10号線追突事故は信号機の故障によるもので、電話を使って信号を送ったという作業に人的ミスが指摘されているが、市井では「電話を使って信号を送る作業は熟練が要求される。経験のなさが仇となってしまった可能性もある」とささやかれている。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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