古から今も変わらず慣習、習慣を受け継ぎながら、流々とした時を刻む町京都祇園。時代を超えて私たち日本人の心を惹きつける「粋の文化」を祇園に入り浸る著者が「かっこいいおとな」になるために紡ぐエッセイ。第10回は、祇園での秋のイベントついてお届けいたします。

撮影/福森クニヒロ

舞とともに秋が始まる祇園

 祇園の秋は、「温習会」という舞の会で始まります。この温習会というのは、毎年十月一日から六日間にわたって行われる、一日一公演のとてもレアな特別な会です。

 祇園甲部には、芸舞妓たちが学ぶための女紅場というれっきとした技芸学校があります。教科の内容は、京舞は勿論ですが長唄、地唄、小唄、清元、鳴物といわれる鐘、太鼓、鼓、笛に三味線、能楽、茶道に生け花、日本画と芸に通じるあらゆる教科を学ぶのです。

 そもそも芸舞妓さんの本業は舞を演じることと、「地方」と言われる演奏なので、お座敷でのお酌やお座敷遊びは、じつは副産物的なものなのです。お座敷での舞の披露は勿論ですが、世界中に出かけて行き京舞を伝えています。その集大成が毎年の温習会なのです。

 日々のお稽古の発表会的な要素もありますが、プロが披露するのですから発表会とはわけが違います。京舞井上流の歴史と伝統は勿論のこと、伝統を守るための創造や工夫がなされた舞の舞台を見ることができるのです。

 京舞井上流は踊るという表現を使わないのも特徴ですが、舞台を見ると「舞」という表現に納得ができるように思います。日本舞踊というカテゴリーになるのでしょうが、素人でも舞を通じて何かを感じさせてくれる表現力はほかに例えようがありません。