シリコンバレーの由緒あるふたつの企業が苦境に立たされている。ヒューレット・パッカード(HP)とヤフーのことだ。

 このうちHPと言えば、シリコンバレーの老舗中の老舗。スタンフォード大学のエンジニアリング学部を卒業した2人の学生が創業したことが、いつまでも語り草になる企業だ。同社は、企業用サーバからプリンター、パーソナルコンピュータ、そしてモバイル機器まで幅広く手がけてきた。ところが、今や指針を失った上に、度重なるトップ交代ですっかり疲れ果てている感じだ。

 振り返れば、HPの迷走は、3代前のCEOであるカーリー・フィオリーナ時代に始まった。フィオリーナ氏はパーソナルコンピュータ部門を強化すべくコンパックとの合併を主導するも経営の混乱を招き、創業者一族ともめた。対立は長々と続き、最後には役員会と衝突して辞職するに至った。

 次にCEO職についたマーク・ハード氏は、ばさばさと人材とコストをカットして数字上の業績は上げたが、会社の進路に対するビジョンが明確でなかった。プリンター部門が好調だったこともあり、一時はHPはプリンター企業として大きく姿を変えるのかと思われていたが、その後パームを買収。これからはモバイルに力を入れていくのかと期待されていた矢先に、スキャンダルで退場した。

 その次にやってきたレオ・アポテカー氏はSAP出身。PC事業を切り離し、パーム事業の継続を取り止めると発表。先の2代のCEOの目論みとは、まったく反対の方向へと舵をとった。企業用ソフトのSAPというバックグラウンドもあり、PC事業を売却したIBMのように、企業向けハードウェアと企業用ソフトを組み合わせてコンサルティングを行うような将来が見えたところだった。

 ところが、このアポテカー氏も1年経たないうちに退場。次にやってきたのは、金融業界出身で、その後消費者向けネットオークション会社のイーベイを率いていたメグ・ホイットマン氏である。HPのようなハードウェアのアセットを持つ企業が、果たして彼女の手に負えるのかが注目されている。

 HPと一時期提携していたオラクルは現在、HPへの敵対的買収を仕掛けるのではないかともささやかれている。ホイットマン氏を強力にCEOポストに推したHP取締役会会長のレイ・レーン氏は、かつてオラクルのCEOを務め、当時会長職にあった創業者のラリー・エリソン氏とは犬猿の仲。2人の代理戦争として、HP対オラクルの激戦が起こってもおかしくないというわけだ。