「パワハラと言われるのが怖くて部下とはなるべく距離を置いている」「部下が何を考えているのかわからない」……職場において、こんな話を聴いたことはないだろうか。働き方改革やコンプライアンス重視の風潮が強まる中、マネジャーによる部下育成は困難を極めている。本間浩輔氏によるベストセラー『増補改訂版 ヤフーの1on1』では、部下との対話の場としての1on1について実践的に解説されている。本稿では、人的資源管理の専門家である永田正樹氏に上司と部下のコミュニケーションについて話を聞いた。

まずは「なるほど」で受け止める
突然ですが、あなたの職場の上司は、部下の話を聞いてくれていますか。
1on1やコーチングという言葉が広まる中で、私はずっと「聞ける上司」という表現を使ってきました。話を聞く、ではなく、本当に聞けている上司が、今の職場にはどれくらいいるだろう?と。
「1on1で何を話せばいいかわからない」「部下が何を考えているのかつかめない」――。
そう悩む管理職の多くは、実は「部下に話してもらうこと」ではなく、「部下の話を聞くこと」ができていないことが多いのです。
1on1で部下が本音を語ってくれるかどうかは、上司の反応にかかっていると言っても過言ではありません。
たとえば部下が、「正直、この仕事が自分に合っているか分からなくなってきました」と話したとします。
この時、よくあるのが「正論返し」です。
「誰だってそう思う時はあるよ」
「でも、仕事ってそういうもんじゃない?」
……これでは、部下の気持ちはそこで止まってしまいます。
逆に、「そうだよね」と即同意するのも、時に軽く受け止められてしまう。
共感とは同意ではなく、「そう思ったんだね」と感情を一度そのまま受け取ることです。
私は、まずは「なるほど」と受け止める姿勢がとても大切だと感じています。なるほど、と言われると、人は続きを話そうという気になります。