21世紀を生きる 子どもの育て方

文部科学大臣補佐官 鈴木 寛 特別インタビュー

これから数年間で、学校も入試もこんなに変わる!
21世紀を生きる子どもの育て方 【第3回】

著者・コラム紹介
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2020年は戦後教育の節目の年となる。10年に一度の小中高の学習指導要領改訂に合わせて、共通1次試験以来40年間続いてきた大学入試制度が大きく変わる。OECDのアドバイザーも務め、教育改革の最前線で奮闘中の文部科学大臣補佐官・鈴木寛氏に話を聞いた(第3回)。 (インタビュアー/後藤健夫)

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入試問題改革から「就活改革」
論理的思考能力が必須に

文部科学大臣補佐官 鈴木 寛(すずき・かん)
1964年兵庫県生まれ。灘中学校・高等学校、東京大学法学部卒業。86年通商産業省(現・経済産業省)入省、ネット ワークインフラの整備などに尽力。通産省在任中から大学生などを集めた私塾「すずかんゼミ」を主宰。99年慶應義塾大学SFC環境 情報学部助教授を経て、2001年参議院議員。文部科学副大臣を2期務める。14年2月より、東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大 学政策メディア研究科教授に同時就任(国立・私立大正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号)。15年2月より現職。他 に、日本サッカー協会理事、日本教育再興連盟代表理事、日本スポーツ振興センター顧問、ストリートラグビーアライアンス代表な どを務める。 (写真:石原敏彦)

―高大接続システム改革というのが間違いで、端的に大学入試問題改革とした方がよほど効果的。後からシステムの問題が出ます。順番をどこで間違えたのやら。

鈴木 本当のツボはどこにあるか、そこは外さずに来ることができました。学内を説得し、自発的に記述問題を増やし、新思考の入試を導入し始めてくれた早稲田大学には感謝したい。

―ただ、早慶に続く大学がまだまだ少ない。

鈴木 予備校は変わりました。規模的にも、併願校的にも私立文系に対して影響力を有するのは早稲田ですが、他大も追従するでしょう。高大接続は六合目まで来た。関ヶ原は終わったが、大坂夏の陣・冬の陣はまだといったところ。

 次に手掛けるのは「大社連携」。大学と社会(実業界)が決定的に組むことで、他の大学も付いて来てほしい。決していいこととは思わないが、結局は入試と就活。保護者の関心も含めて、ツボはこの2つです。

―これからの世の中で必要とされる能力とは。

鈴木 15歳の段階で見ると、OECDで日本は理数がトップの成績です。うち上位2割の生徒は抜群にできる最高のレベル5にいる。ところが、高2の4月で数学を学ぶのを止めてしまう。こんな損失はない。

―入試で要らないと言われれば数学を学ぶのを止めてしまう。

鈴木 SFCが小論文と情報だけの入試を始めて2年。この塊をどう育てるかが日本にとって重要です。既存の大学の序列はなかなか崩せませんが、同様の入試を始めれば、今ならSFCや国立では名古屋大の情報学部に続く塊に参入できる。パソコン大好きという学生層は就職も起業も大丈夫です。

―本当にコンピュータだけやっている子っていますね。

鈴木 グローバル教育を徹底的にやった秋田の国際教養大学は産業界から評価され、短期間で東大文Ⅲの次の位置を確保しました。何でも徹底すれば評価されます。

 SFCには、ヤフーCSO(チーフストラテジーオフィサー)の安宅和人さんと組んだ「データサイエンス」という開講2年目の超人気科目があります。毎回、トップエンジニアがヤフーからやってくる。

 世界中で通用するこの初級とアドバンスの2科目を修了したら、成績評価値のGPAではなく、この科目の成績に注目し、重要参考情報としてヤフーのインターンと就活を判断しています。授業料はこの科目だけで元が取れると学生に言っています。

データサイエンス
data science
 ビッグデータをビジネスに活用するため、機械学習、データマイニング、予測分析、ディープラーニングなど多様な手法を用いて、データの中に隠されたパターンや知見を明らかにする。

 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)では、「データの獲得・編集・分析手法とモデリング・シミュレーションおよび論理・確率・代数などの数理科学について」学ぶ科目が設置されている。工学院大学では昨年から情報学部にデータサイエンティストの育成を目的としたシステム数理学科を新設した。滋賀大学は今年からデータサイエンス学部を開設した。

―日本の学生はもともとポテンシャリティが高い。そのことを認めて、ちゃんと実社会に連れて行ってあげるのが大学の役割です。

鈴木 次世代型のデータサイエンティストが日本は本当に足りない。ヤフーは、「ウチだろうが、NTTや富士通に行こうがかまわない。この能力を上げないと日本の将来は危ない」と、太っ腹なことを言ってくれています。

 真剣に現実を見て、産学が自分たちの持つリソースを検討すれば、ソリューションは出てきます。

データサイエンティスト
data scientist
 2013年に一般社団法人データサイエンティスト協会が設立されたが、この新しい職業の対応領域は広い。プログラミング言語、統計学などの複合的な手法を用いて帰納法的なアプローチで新たなビジネスチャンスを見出す。戦略コンサルの分野としてのマーケティングでも求められる人材。フリーランスでは時給8万円ともいわれ、それだけ日本では人材が決定的に不足している。

―採用コストがかかるとぼやいているその他の会社の人事は何を考えているのか(笑)。

鈴木 これから劇的に産業構造、社会構造が変わっていく中で、どうやって人材を育成していくのか。とりわけ文系の学生をどうするのか。 

 戦後70年間、国は文系には投資しなかったが、幸い、白紙の状態でも入社後に会社で教育する仕組みがあった。終身雇用ならその費用も回収できたが、今は企業もそこまで育成に投資してくれない。

 世界の大学ランキングで、東大の物理は3位です。ただ、社会科学が200位以下なので全体の順位が下がってしまう。東大をベスト5に入れるのは簡単です。文Ⅰ、文Ⅱを止めればいい(笑)。

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後藤健夫[教育ジャーナリスト&アクティビスト]

1961年愛知県生まれ。南山大学経済学部卒業後、河合塾に就職。独立後は、大学コンサルタントとして、有名大学などのAO入試の開発、入試分析・設計、情報センター設立等に関与、塾・高校の進学アドバイザーも。早稲田大学法科大学院設立に入試設計・募集担当として参加。Pearson Japan K.K 高等教育部門顧問。『セオリー・オブ・ナレッジ―世界が認めた「知の理論」』(ピアソンジャパン)を企画・出版。


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