インフレ率が上がらなくても欧米で出口戦略が進む理由失業率が低いにもかかわらず、インフレ率が弱いことに、イエレンFRB議長も首をかしげている Photo:UPI/アフロ

「ミステリー以上のものがある。FOMC(米連邦公開市場委員会)がその原因をはっきり理解していると言うつもりはない」

 米国の失業率は16年ぶりの低さなのに、インフレ率は目標の2%に届かない状況が続いている。9月20日、その理由について、米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長は記者会見で冒頭のように語った。

 FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数前年比のコア部分(食料とエネルギーを除いたもの)は、年初には1.8%だったが、最近は1.4%だ。8月の消費者物価指数(CPI)は表面的には久しぶりに強めとなった。だが、中身はさほどでもなく、住居関連を除いたコアCPIは0.5%の上昇にすぎない。

 携帯電話料金の下落といった一時的な要因もあるとはいえ、FRBはインフレ率の弱さに首をかしげている。それでも彼らは9月にバランスシートの縮小開始を決定した。しかも、年内のさらなる利上げ実施も強くにおわせた。インフレ率の反転上昇を確認せずとも、利上げを推し進めようとしている。

 インフレ率の弱さを「ミステリー」と呼んでいる中央銀行が、そうした判断を示唆することは一般的には珍しい。特にFRBの場合はそうだ。また、コアPCE物価指数は5年以上も目標の2%を下回り続けている。その状況で利上げを継続すると、人々に「インフレ率は低くてもいいと、FRBは思っている」と印象付けてしまう恐れがある。以前のFRBならば、そんな心配をしたと思われる。