かつてはお堅いイメージの「教育テレビ」だったNHK・Eテレが、昨年あたりから「攻めている」とメディアで取り上げられるようになった。いったい、Eテレにどんな変化が起きているのか? そこで、“攻めてる番組”の象徴とも言える「ねほりんぱほりん」チーフ・プロデューサー、大古滋久氏に続き(詳しくは『最近攻めてるNHK・Eテレの象徴「ねほりんぱほりん」責任者に聞く舞台裏』参照)、昨年6月からEテレの番組編成責任者を務める、熊埜御堂朋子編集長に話を聞きに行ってきた。
NHKの中で一番“弱小”のEテレをどう編成するか
――最近「Eテレが攻めている」と注目されることが多くなっています。
熊埜御堂 ええ。それはもちろん嬉しいことです。でも、この1~2年で急に変わったわけではなく、長い時間を掛けて変わってきたんです。たまたま、「ねほりんぱほりん」や「バリバラ」(※)など目立つ番組が出てきたことで、注目度が高まっているんだろうと思っています。
ただ、この間ちょっとびっくりしたことがあったんです。今年3月に「Eテレのブランディング調査」というのを行なったのですが、そこで出てきた今の「Eテレ」に対するイメージが、人に例えると、「30代の中性的な人物、IT系、デザイナー、クリエイター」、「自由、柔軟、個性的、チャレンジャー、多様な価値観、癒される」。それが15~20年前の「教育テレビ」に対しては「おじさん、演歌歌手、公務員」「地味、保守的、一方通行、近づき難い」だったんです。Eテレに対する視聴者の方のイメージが、これだけ変わっていたことにすごく驚きました。これは現場のアイディアの一つひとつが積み重なってこんなにも転換したんだなあ!とつくづく思って。私たち、Eテレがやろうとしていることは間違ってないと信じていいんです、と現場にも伝えました。
――実際には、編成の責任者である編集長として「Eテレ」をどんなチャンネルにしたい、という方針を持っているのでしょうか。
熊埜御堂 Eテレは、今NHKにある4波(地上2波、BS2波)の中で、予算的にも一番“弱小チャンネル”なんです。でもだからこそ、個性際立つ番組やコンテンツを並べたい、そこでは負けないぞ!と思ってやっています。
(※)2012年にスタートした障害者のための情報バラエティー番組。笑いの要素を織り交ぜタブー視されてきたテーマにも挑んできたが、2016年4月から、障害のある人に限らず「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティー」の人たちにとっての“バリア“をなくすための番組に進化。