「今までの買取って、商品を持ち込んで、鑑定士がジーっとモノを見て『はい、いくらで買い取ります。売りますか?売りませんか?』という世界。しかし、「やっぱり人と人ですから。会話をして査定価格の説明をちゃんとしてあげることが大事」。人情の街・大阪で丁々発止のやり取りを続けていくうちに気づいたのだった。

 そこからは、順調に業績を拡大していく。大阪出店の翌年に起きたリーマンショックも大きな影響はなかった。

「不況でも好況でも、どっちでもチャンスがあるのが中古ブランド品買取のビジネスの面白いところなんです」と嵜本は微笑む。つまり、好況下では「買い替え需要」が高まり、売値にあまり頓着しなくなる。一方、不況になれば、金が足りなくなり、なりふり構わずブランド品を売ろうとする動きが高まるというわけだ。

取捨選択を冷静に行い
一気に業界での存在感を増す

 嵜本の次なる狙いは、「1.5兆円の市場」だ。ブランドラグジュアリー品の新品販売額は約2.2兆円、一方、ブランド品のリサイクル市場は4500億円前後。つまり、日々使うものを差し引いても、約1.5兆円の新品がクローゼットの中にあるといることになる。嵜本が狙うのは、この市場の大部分を占めている「そもそもブランド品を売るという選択肢がない人」だ。

「彼らはブランド品を“コスト”と考える。でもブランド品は“アセット”なんです。しかもそれは、日々目減りしてしまう」。そうした人のために、アプリを開発した。自分の持っているバッグや時計、貴金属などの情報を入力すると、現在の“総資産額”が算出される。これだけなら競業他社も行っているサービスだが、「なんぼや」ではブランド品の“将来価格”まで算出することができる。

 つまり、保有しているブランド品が1年後、どれくらいの価値になっているかが分かるのだ。もし、ユーザーが“売り時”だと判断すれば、そこから「なんぼや」の買取サービスにつなげていくことが可能になる。これは、オークションで同業他社の購入データを全て保有している「なんぼや」ならではの取り組みだ。

「BtoBのデータこそ、私たちの最強のアセットです」と嵜本は自信をのぞかせる。

 例えば、「捨てるのはもったいない」と、クローゼットにしまったまま使っていないブランドバッグ。そのまま放っておけばコストになってしまうが、買い取ってもらえば「お金」という資産に変わる。バッグ自体も、次に必要としている人へとつなげられる。