10月14日付でオリンパスの社長を解職されたマイケル・ウッドフォード氏。この電撃解任の背景には、菊川剛会長らオリンパス経営陣が過去に行ってきた企業買収に伴う不透明なカネの流れを、ウッドフォード氏が追及したことがあった。本誌は渦中のウッドフォード氏に、単独でインタビューする機会を得た。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 深澤 献)

「これから前向きに進むうえでの対策として、あなた方両者が役員会から辞任することが必要です」

 10月11日、オリンパスのマイケル・ウッドフォード社長(当時)は、菊川剛会長と森久志副社長に、A4用紙13枚にわたる手紙をEメールで送付した。

 ところが3日後、10月14日の取締役会で、ウッドフォード氏は辞任を迫った相手から、逆に社長の職を解かれてしまう。解任決議は全会一致で、ウッドフォード氏にはいっさいの発言が認められなかった。その日のうちに都内のマンションの鍵の返却を求められ、パソコンも携帯電話も奪われた。自分で成田空港までのバスを予約し、英国の家族の元に帰った──。

 発端は月刊誌「FACTA」8月号、10月号に相次いで掲載された記事だった。オリンパスが過去に行ったM&Aでの巨額損失と、不透明な資金の流れを指摘する内容だ。記事の英訳を読んだウッドフォード氏は8月、菊川会長と森副社長に、事の真偽を尋ねた。その際2人は「国内のことだから、あなたは知らなくていい」と詳細な説明を拒んだという。

 ウッドフォード氏は、4月1日に欧州法人社長という立場から本社の社長兼最高執行責任者(COO)に抜てきされ、話題と期待を集めていた。後にオリンパス傘下に入る内視鏡の販売代理店の営業マン出身で、その会社では30歳で社長に就任した。「机の上に置く私物は二つまで」「飛行機での移動は勤務時間中にするな」「会社から30キロメートル圏内に住め」……いささか強引なところはあるが、欧州時代の効率、完璧を求める経営姿勢には定評があり、「正義感が強い人物」と、彼をよく知る人物は言う。

 そんなウッドフォード氏にすれば、コーポレートガバナンス(企業統治)にかかわる重要な情報が社長に届かないという事態は我慢ならなかったのだろう。