経済格差の解消、雇用の改善を求めてニューヨーク・ウォール街で始まったデモは全米だけでなく、世界中に拡大しつつある。ティーパーティーのような政治への影響力を持つ存在になりうるのか、現地レポートとともに検証してみた。
(ジャーナリスト・津山恵子)
「オキュパイ・ウォールストリート(OWS=ウォールストリートを占拠せよ)」。短いツイッターのつぶやきが、米国の若者の心をとらえ、さらに世界中の人々が協調する未だかつてない運動に発展している。運動を始めた若者らは、米ニューヨークの金融街ウォールストリート近くに1ヵ月以上も寝泊まりし、「反格差」「反大企業本位主義」を訴える。運動は、若者らが希求する「変化」をもたらすことができるのか。
Photo by Keiko Tsuyama
事の始まりは、今年7月15日に表れた意味不明のツイッターのつぶやきだ。
「9月17日。ウォールストリート。テントを持って来よう」
つぶやきに続くリンクをクリックすると、環境問題などを扱う反商業主義の雑誌アドバスターズ(カナダ・バンクーバー)のブログに導かれる。そこには黒字に黄色の文字で「オキュパイ・ウォールストリート」の大きな題字。さらに、「(エジプト・カイロの)タヒール広場を再現する準備はできているかい。9月17日、テントを、キッチンを、平和的なバリケードを設けて、真の民主主義を失墜させるゴモラ(聖書の中の腐敗と罪の都市)である米最大の金融街ウォールストリートを占拠しよう」と呼び掛けている。
同誌の発行部数は12万部だが、このブログはツイッターほか、フェイスブックで拡散し、学生や失業中の若者の心をとらえた。
「大学では誰もがこのことを話していた。どこから出た情報かも知らないけど、友人と15人でメイン州から来た。学校が休みの週末にはまた来る」
と語るのは、ベルギーからの留学生で、OWSに加わったマリウス・ニコラス(19)。若者層でどれほど、情報が流通していたかが分かる。
そして、9月17日土曜日、ウォール街周辺には約1500人が集結した。インターネットで動きを察知していたニューヨーク市警はあらかじめ狭いウォールストリートを全面閉鎖。通りに入れない若者らは押し戻され、その後、ウォールストリートの北200メートルのところにあるズコッティ公園に落ち着いた。若者らが現在「リバティ・プラザ(自由の広場)」と呼び、1ヵ月以上キャンプしている場所だ。
これを当初報じたのは、ニューヨークの地元ニュース専門局「NY1」だけだった。組合や人権団体などによる数千人規模のデモは、ニューヨークでは日常茶飯事だからだ。