座って30分後にはエコノミークラス症候群の
キケンな前兆があらわれる

 エコノミークラス症候群は、長時間のフライトなどで起こりやすいことが知られていますが、原因は、そう、座りすぎ。狭い座席でじっとしていると、下半身の血流が滞って血栓ができ、血の塊が肺の血管を詰まらせて、肺塞栓症(はいそくせんしょう)などを誘発するのです。

 エコノミークラス症候群は飛行機搭乗中にだけ起きるわけではありません。東日本大震災や熊本地震では自宅を失った被災者が、自動車の中で寝泊まりしてエコノミークラス症候群にかかってしまい、そのうち何名かは死亡してしまった痛ましい事故が発生しました。記憶にある人も多いでしょう。

 このようにエコノミークラス症候群は、時には命も落とす恐ろしい病ですが、長く座っていれば、航空機内や車の中にかぎらず、デスクワーク中やテレビを見ているときにも起こる可能性があるのです。

 すべては動かないことによる、足の血流不足が始まりです。

30分座り続けただけで
血流速度は70%も悪化!

 8月に放映された日本テレビ系列の「世界一受けたい授業」では、著者が座りすぎの弊害と対策について解説しましたが、番組内で紹介された実験では、座って5分もすると血流がたちまち悪化し、30分後には血流速度は70%も低下することがわかりました。

 たった30分でも悪化が顕著なのですから、数時間も座り続ければ体にどのような悪い影響を与えるのか、想像するとぞっとしませんか?

 筋肉の7割は下半身に集中し、足には「第二の心臓」と呼ばれる「ふくらはぎ」や、人体でいちばん大きい太ももの筋肉がついています。どちらも血流と深く関わる要所ですから、下半身を動かさないと血流が悪化して健康がどんどん遠ざかって行くのです。

 血流が滞れば代謝機能も低下し、血中の糖の取り込みや脂肪の分解がスムーズにいかなくなります。すると、余分な糖や脂肪があふれ出て、いわゆる血液ドロドロの状態に。2時間座り続けたあとの血液の状態をみると、明らかに血糖値の上昇がみられ、糖代謝にかかわるインスリンが大幅に減るという報告もあります。また、座っていると、股関節まわりの血管やリンパ管がぎゅっと圧迫されることも、血流悪化の一因です。

 つまり、仕事でよく座る人は、毎日エコノミークラス症候群になりに職場に行くようなもの。そこに徹夜仕事、睡眠不足、深夜のアルコールなど重なれば、体はもうヘトヘト。ついには悲鳴を上げ、ある日突然、本当にエコノミークラス症候群に見舞われたり、脳梗塞や心臓発作で救急搬送されたりという事態にもなりかねません。実際、働き盛りのビジネスマンが倒れるケースは後を絶ちません。