医師の処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)から、処方箋不要のOTC(大衆薬)に転用された医薬品をスイッチOTCという。7月の国の「第2回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会)では、医療用医薬品である緊急避妊薬のスイッチOTC化の妥当性が議論された。医師、薬剤師、消費者代表などで構成される委員からは「OTC化は妥当ではない」という意見が相次ぎ、スイッチOTCそのものにあらためて注目が集まっている。『週刊ダイヤモンド』10月21日号の第2特集「追い風は本物か 踊り場のOTC」の拡大版としてキーパーソンたちのインタビューを全4回でお届けする。第2回はスイッチOTC検討会の委員、乾英夫・日本薬剤師会副会長に聞く。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)

――薬剤師会としてのスイッチOTCへのスタンスを教えてください。

緊急避妊薬の薬局での販売に日本薬剤師会はなぜ慎重姿勢かいぬい・ひでお/1955年生まれ、62歳。2010年から大阪府薬剤師会副会長、14年から日本薬剤師会副会長。16年からスイッチOTCに関する国の評価検討会議議長。 Photo by Masato Kato

 基本的には国民の生活の役に立つ医薬品であれば賛成。ただ安全、安心を担保できるもの、誤った使い方、目的外使用などが起こるようなものは十分、慎重に。今の制度でどこまでできるのか。やはり対面販売をしないと、安全性を担保できないものも当然ある。

――医師会は生活習慣病治療薬のスイッチを認めない考えです。薬剤師会も分野によって方針がありますか。

 それはない。薬剤師が服薬指導して安全性が担保されるのであれば、しかも生活者にとって役に立つものであれば個別に考えます。

――7月の検討会では緊急避妊薬について、「現状制度ではスイッチ後、原則3年で第1類医薬品になる」として慎重な姿勢を示しました。

 1類になるとインターネット販売が可能で、薬剤師による対面販売から外れる。国としてはルールを作って「ネット販売でも必ず薬剤師が相談に乗る」となっているが、それが必ずしも順守できていない。そういうことが非常に心配。実際に生活者にその医薬品が必要かどうかは、店頭に来ていただいて、お話をあれこれ聞いて分かるし、「このケースなら医師への受診を奨励する」ということもある。それは対面でなければ分からない。