3.11震災後、原発事故による放射能汚染を心配する世界の人々は、なかなか観光のために日本を訪れようとしない。すこしでも日本の実情を世界にアピールするため、日本政府をはじめ各地方自治体が、積極的に海外に向けて情報発信しようとしている。特に、近年多くの観光客を送りだしている中国には、より多くの人力と予算をつぎ込んでアピールしている。
しかし、各地方自治体の観光キャンペーン作戦を見ていて、首をかしげることが多い。まず、みな競って上海詣でをする。ごく一部の地方自治体を除けば、ほとんどの地方自治体にとって上海へのアピールはほぼ自己満足に終わっている。その効果というと、日本の地元の納税者に報告できるほどの内容はないに等しいと指摘せざるを得ない。上海の現場では、「また日本の観光宣伝が来たのか」と、集中豪雨式に殺到する日本の観光キャンペーンに、ある種の金属疲労現象に近い拒絶反応が起きている。
知事が率いるプロモーションツアーでも、上海で市レベルの行政担当者に会えず、訪問した数社の旅行社でのあいさつも、日本部部長止まりで終わり、せっかくの訪問なのに上海で会えた関係者の人数が20人未満の場合もあった。さらに、訪問先のメディアにまったく相手にされず、ニュースとして取り上げてもらうために、個人的な関係という裏技を使わざるを得なかったりもする。本当に惨憺たるものだ。
ずっと前から私はこうした現象をからかっている。「まるで上海で稼いだ人民元が、中国のほかの地方で得た人民元収入よりも為替レートがよいようだ」と。なぜ中国の地方自治体により積極的に働きかけないのか不思議で仕方ない。
最初の一歩を踏み出した
山梨県の観光キャンペーン
いつも私のこうした主張を聞いている地方自治体の中に、つい意を決して勇敢にも最初の一歩を踏み出したところがあった。私が以前からずっと何らかの形で県の観光事業にかかわっている山梨県が、中国の地方に観光キャンペーンに行こうと応じてくれた。