ベテラン社員たちから「40年以上前から不正があった」など、驚きの証言が出ている神戸製鋼所。ちょうどその時代、不正につながったのではないかと思われる、神戸製鋼とソ連(当時)との密接な関わりがあった。(ノンフィクションライター 窪田順生)
バブル期以前から不正続ける!?
47年前、神戸製鋼を焦らせた“事件”
日本の「ものづくり神話」を根底から覆す衝撃的なニュースではないだろうか。
国内よりもむしろ海外で注目を集めている神戸製鋼の品質検査データ改ざんについて、「毎日新聞」(10月17日)が「40年以上前から不正があった」という元社員の証言や、「鉄鋼製品では30年以上前から検査データの不正が続いている」というベテラン社員の証言を紹介しているのだ。
同社は会見で、約10年前から改ざんがあったことを認めているが、そんなかわいいものではなく、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が謳われたバブル期はおろか、下手をしたら高度経済成長期から脈々と続く「伝統」だった恐れもあるのだ。
報道が事実か否かは、いずれ神戸製鋼側からしっかりとしたアナウンスがあるはずなので注目したいが、もし仮にこれが事実だとしても、個人的には「うそでしょ?」というほどの驚きはない。
先週、筆者は『神戸製鋼も…名門企業が起こす不正の元凶は「世界一病」だ』という記事を書いて、「世界一の技術」を30年以上も謳ってきた同社の尊大すぎるスローガンで「現場」が追いつめられ、そこに実力が伴わずに不正を招いたのではないかと指摘したが、そのルーツが「40年以上前」にあるとなると、その可能性がさらに増してくる。
実は今から47年前、神戸製鋼の技術者たちがすさまじい「世界一」のプレッシャーに襲われるようなニュースが鉄鋼業界を賑わせた。
《粗鋼生産高 「新日鉄」世界一に》(読売新聞1970年2月25日)
新日鉄が、それまで世界一だったUSスチールを追い抜いたのである。この「世界一」の勢いはとどまることを知らず、半年ほど経過した頃には新日鉄大分製作所に「世界一」の規模を誇る高炉の建設も始まっている。