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組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

「いい会社」ほど組織ぐるみの不祥事が起こる理由

秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
【第44回】 2016年6月6日
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 昨今、有名大手企業の不祥事がたびたび取り沙汰されているが、これは個人に原因がある問題ではない。間違いなく組織の問題である。そこで今回は、組織ぐるみの不祥事が起こるメカニズムについて解説したいと思う。

不祥事を起こす最大の要因は
「倫理意識の欠如」などではない

組織ぐるみの不祥事、そのカギは「戦略の欠如」だと意外と気づいていない人が多いようです

 最初のキーワードは、「戦略の欠如」である。生存できる要件を満たしていない企業や組織は、いつか必ず不祥事を起こす。

 本来は、商品やサービスで正当に競争が行われるべきなのだが、研究開発能力、組織の実行能力、原材料の調達力、市場でのブランド力などの経営資源や、最低限必要な市場シェアなどが欠けていると、実際にはまともに戦うことすらできない。さらに、自分たちの弱みを帳消しにするような優れた戦略が用意されていなければ絶望的である。そのような状況下で、経営陣から一定以上の成果を強力に求められれば、現場は問題行動を起こさざるを得ない。

 たとえば、今からテニスプレイヤーの錦織圭くんと試合をして、何がなんでも勝たなければいけないとする。みなさんならどうするだろうか。一生懸命練習したところで土台無理だし、必殺技を編み出す時間もない。考えるまでもない。何らかの反則をするしかないのだ。不祥事を起こすのは、このように無理な状況下で無理な要求をされ、悪事を働かなくてはならないところまで追い詰められた組織なのである。

 不祥事を起こした組織の記者会見では、経営者が「なぜ違法行為を止められなかったのか」と追及される。そして第三者調査委員会の報告書には、倫理意識の欠如、規程の不備、評価の在り方の問題、それを放置した経営者の姿勢の問題などが列挙されるが、本当に問題視されるべきは「無理な条件で不可能な成果を求めた『戦略の欠如』」のほうである。有効な戦略がないなら、撤退し可能性のある分野に技術や経営資源をシフトするか、M&A(売却)などの手段を考えるか、などの選択肢をとるべきなのだ。

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秋山 進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]

リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

著書に『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『転職後、最初の1年にやるべきこと』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』『愛社精神ってなに?』などがある。


組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

日本には数多の組織があり、多くの人がその中に属しています。組織は、ある目的のために集まった人たちで成り立っているにも関わらず、一度“病”にかかれば、本来の目的を見失い、再起不能の状態へと陥ります。しかも怖いのが、組織の中の当人たちは、“病”の正体が分からないどころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気づけない点です。

この連載では、日本の組織の成長を阻害している「組織の病気」を症例を挙げて紹介。コンプライアンスの観点から多くの企業を見てきた筆者が考える治療法も提示します。

「組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進」

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