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森信茂樹の目覚めよ!納税者

複雑な技巧論に走り過ぎて
増税の理由がさっぱり伝わらない消費税議論

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第13回】 2011年10月28日
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国民にまったく伝わっていない
社会保障・税一体改革「成案」の中身

 臨時国会が始まり、マスコミの議論も震災前のアジェンダに戻りつつあるようだ。TPPが注目されているが、より大きな課題は、社会保障・税一体改革、消費税増税であろう。財務大臣は、今年度中に「消費増税準備法案」を国会に提出する意向を示しており、党内外の議論が始まる。

 消費税の最大の問題は、6月末に決定された「成案」なるものが、マスコミによって「しかと」され、国民にはまったくといってもよいほど中身が伝わっていないことだ。マスコミが無視した理由は、「どうせ菅政権では実現しようがないのだから、紙面を割いても無駄」というものであったのだろう。

 もう一つ理由がある。それは、次のことである。

 「成案」の内容である、「なぜ消費税率を10年代半ばまでに、段階的に10%まで引き上げる必要があるのか」という理由は、自民党の経済金融担当大臣以来の与謝野チームが、厚生労働省を巻き込みながら作り上げたものである。しかし、その内容はあまりに専門的すぎて(役人的すぎて)、「国民への説明」という視点を欠いている。

 内容自体は、優秀な役人を集めた与謝野チームの労作だけに、実によくできている。消費税率を5%引き上げれば、「社会保障の安定財源の確保」と「財政再建(15年のプライマリーバランスの半減)」が両立するという内容で、非の打ちどころはない。

 しかし、これから述べるように、その内容はさっぱり国民には伝わってこない。

あまりに複雑・技巧的な
消費税引き上げの根拠

 「成案」は、消費税率引き上げの根拠である社会保障に必要な経費を、「機能強化」「機能維持」「消費税率引き上げに伴う社会保障支出等の増」の3つに分けている。「機能強化」はさらに、「制度改革に伴う増」「高齢化等に伴う増」「年金2分の1」の3つに分けられている。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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