世界中で格差問題が深刻化する中、アメリカの大富豪たちは次々に慈善事業に寄付をしている。バークシャー・ハサウェイCEOのウォーレン・バフェット氏の累計寄付額は約3兆円、ビル・ゲイツ氏、メリンダ・ゲイツ氏の累計寄付額も約3.5兆円に及ぶ。日本企業の経営者は富を独占するよりも社員にわけあたえようとする傾向が強いというが、アメリカの経営者はなぜ外部の慈善事業に寄付をするのか。その動機を宗教と思想の観点からジョーンズ教授が読み解く。

なぜアメリカの経営者は慈善事業に寄付をするのか

佐藤 戦後、日本経済を牽引してきた経営者は、自らが富を独占するよりも、社員や国民に分け与えることを優先してきました。現在も日本企業の経営者の報酬は欧米企業の経営者と比べて驚くほど少ないというのが現状です。一方、アメリカの経営者はまずは自分が富を独占し、その後、慈善事業に寄付をします。なぜ彼らは会社に還元するのではなく、会社とは別の慈善事業に寄付するのでしょうか。

ジェフリー・ジョーンズ教授

ジョーンズ 20世紀、アメリカの経営者が積極的に慈善活動を行ったのは、宗教的な動機からでした。たとえばヒルトン・ホテルの創業者、コンラッド・ヒルトン(1887-1979)。ヒルトンはカトリック教徒の母親と地域で慈善活動をする女性信者(シスター)から大きな影響を受けて育ちました。

 1944年、ヒルトンが財団を設立したのは、「苦しんでいる者、困窮する者、極貧者を救うため」でしたが、これはまさに、カトリックの教えに基づく行為です。彼はホテル事業で財を成しましたが、それで儲けたお金は、カトリックの教えのとおりに使うことを決めていたのです。

佐藤 2007年、コンラッド・ヒルトンの息子、バロン・ヒルトンは、全財産の97%を財団に寄付すると表明しました。「孫のお騒がせセレブ、パリス・ヒルトンに遺産を残さないようにするためではないか」と話題になりましたが、この寄付もカトリックの教えに基づくものだったのですね。ニューヨークに美術館を設立したことで有名なソロモン・グッゲンハイム(1861-1949)も同じような動機で、慈善活動をおこなったのでしょうか。