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2歳女児“見殺し”事件は氷山の一角
神もホトケもない、中国共産党下での「道徳観」

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第87回】 2011年11月4日
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2歳女児見殺しの背景に
2006年の「彭宇事件」

 広東省広州市の2歳女児「悦悦ちゃん」の“見殺し事件”は、上海でも耳目を集めた。

 彼女が轢かれ路上に血を流して仰向けになっているのを、見て見ぬ振りで通り過ぎていく広州市民18人。その模様を収めた映像はまさに“生き地獄”であり、多くの市民の怒りを買った。

 「あまりにひどすぎる!」と鼻孔を広げる上海の住民。そのうちひとりの主婦に「では、あなただったら助けるのか」と尋ねた。するとこんな答えが返ってきた。「隠しカメラが回っているところなら」。同じ質問をある男性会社員に向けると「人が大勢いたら助ける」との回答。共通するのは、「証拠として残る」ことが、手をさしのべる前提となっていることだ。

 これには2006年に起きた「彭宇事件」が背景にある。

 南京市である老婆が転倒し、それに気づいた彭宇さんが助け、病院に送り届けた。その後、老婆から彼の元に4万元に上る薬代の請求書が送りつけられた。この事件は全国的に報道され、また、その後度重なる類似事件に、中国では「安易に人を助けてはならない」という認識が強く持たれるようになった。

 前出の主婦も、「先日もローカルバスの運転手が路上で倒れている老婆を助けようとしたところ、『あんたが轢いた』と逆に訴えられそうになってね。幸い、バスの中のビデオカメラが一部始終をとらえていてこれが動かぬ証拠になった。だから、私もカメラが回っているなら助ける、というわけなんです」と話す。上海の市井でも、人々は「うかつに善行を施してはならぬ」と警戒を強めている。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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