世界各国で軍事予算の削減が進行するなかで、国防を担う戦闘機の生産コストは上がり続けている。今や、1機当たり100~200億円もの大金が必要になる戦闘機は、“国際分業による共同開発体制”を考慮せずには成り立たなくなっている。世界の防衛産業の頂点に立つ、ロッキード・マーティン社の副社長に、日本と米国の関係や、日本の産業界への技術移転の可能性を含めて話を聞いた。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
Photo by Toshiaki Usami
――日本の防衛省は、9月26日に、航空自衛隊へのFX(次期主力戦闘機)の納入をめぐって、国外の戦闘機メーカーからの提案書の募集を締め切った。まず、米国や英国など計9ヵ国が参加して共同開発中の「F-35ライトニングII」(米ロッキード・マーティン社)。次に、主に米海軍で採用されている「FA18/EF(スーパーホーネット)」(米ボーイング社)。そして、英国、ドイツ、イタリア、スペインが共同開発した「ユーロファイター・トランシェ2(タイフーン)」(英BAEシステムズ)。この11月中に、3陣営のなかからどこか1社の戦闘機が選ばれるとされている。現在、どのような状況にあるのか。
すでに、提案書が出された後の「防衛省からの質問に答える段階」に入っている。すなわち、ロッキード社は“待ちの状態”ではあるが、専門的かつ細かい確認事項などが多々あるので、単にイスに座って待っているのではなく、私も含めてスタッフは忙しい毎日を送っている。正式には、米国政府が、日本の防衛省に提案した計画なので、われわれも誠心誠意取り組んでいる。
まず、何よりも、ロッキード社が中心になって開発した「F-35」は、世界最先端の技術で設計された唯一の“第5世代戦闘機”であり、ほかと比べて群を抜く戦闘能力を持っている。今回の選定で競合相手となった「FA18/EF」や「ユーロファイター」は、技術的には“第4世代戦闘機”に過ぎない。
端的に言えば、われわれの「F-35」は、ハードウェア(戦闘機の機体)とソフトウェア(搭載するシステム機器)を統合して、全体を管理・運用するという、まったく新しいコンセプトで設計されたプログラム(システム兵器)だ。だから、「F-35」を選んでもらうことは、日本政府にとっても、日本国民にとっても、多大なるメリットがある。