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日本を元気にする新・経営学教室

スマートフォン革命で挑戦を受ける
業界盟主マイクロソフト
プラットフォーム包囲戦略の弱点
早稲田大学ビジネススクール教授 根来龍之

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],平野光俊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],根来龍之 [早稲田大学ビジネススクール教授、同ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長],髙木晴夫
【第36回】 2011年11月7日
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 マイクロソフト(MS)の主力製品であるWindowsは、補完製品(アプリケーション)を必要とするプラットフォーム製品(PF製品)である。MSは、このPF製品のシェア占有によって、自社提供のアプリケーションソフト(IE、Word、Excelなど)でも大きな成功を収めてきた。今回は、ブラウザ戦争の歴史を通じて、MSの成功パターンのメカニズムと弱点について考えてみよう。

新たな挑戦を受けるマイクロソフト

 1975年に、ビル・ゲイツが、ハーバード大学を中退して、ポール・アレンとともに設立したマイクロソフト(MS)の成功は、1981年に発売されたIBMのPCに、MSが提供するオペレーティングシステム(OS)であるDOS(Disk Operating System)が採用されたことに遡る。今でもMSの主力商品は、DOSを発展させてきたWindowsである。

 MSは、何度も他の企業から挑戦を受けてきた。例えば、MSが大きな危機感を持ったのは、インターネットの誕生と成長であった。1990年代半ばに、ネット上のテキストや図表などのコンテンツ(Webコンテンツ)を表示するソフトウェアとして、ネットスケープ・ナビゲーター(Netscape Navigator; 以下、NN)が急速に普及していく中で、最初のうちMSは対抗商品を持っていなかった。

 ネットスケープが、Webブラウザ(以後、ブラウザ)であるNNとWebサーバ・ソフトウェア群をリリースしたのは、1994年12月であった。対するMSがインターネット・エクスプローラー(Internet Explorer; 以下、IE)をリリースして市場に参入したのは、1995年8月である。そして、MSは、後発であるにもかかわらず、挑戦を跳ね返すことに成功したのである。

 最近、MSは、スマートフォンなどのモバイル機器の発展によって、新たな挑戦を受けている。スマートフォンやタブレットでは、MS以外の会社が提供しているブラウザが使われていることが多く、PCの地盤沈下がMSに不利に働いている。PDA用OSでは、MSは、もともと先発企業の一つであった(WindowsCE、1996年11月発表)が、スマートフォンでは後発的立場となっている。

 MSは、他にも、オープンソースソフトウェアやJAVAへの対抗、検索サービスなどのネット系サービスでの出遅れ、クラウドサービスへの対応等の課題の中にいるが、以下では、ブラウザ戦争の歴史をたどることで、MSの成功を作りだした戦略パターンと弱点について考えてみよう。

パラレルプラットフォーム市場

 WWW上のコンテンツはHTML(Hyper Text Markup Language)という言語で書かれており、Webページと呼ばれる。HTMLで書かれたコンテンツをWWWで提供するには、Webサーバと呼ばれるサーバ製品(ソフトウェア)が必要である。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

平野光俊(ひらの みつとし) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1980年早稲田大学商学部卒業、94年神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、98年同大学院博士課程修了、博士(経営学)、2002年から同大学院助教授、2006年から現職。経営行動科学学会会長、日本労務学会常任理事、日本労働研究雑誌編集委員。主著に『日本型人事管理』中央経済社。

根来 龍之(ねごろ たつゆき) [早稲田大学ビジネススクール教授、同ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長]

京都大学卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了、鉄鋼会社、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て現職。京経営情報学会会長、国際CIO学会誌編集長、CRM協議会副理事などを歴任。2001年度より早稲田大学教授。2010年10月より早稲田大学ビジネススクール・ディレクター。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。『代替品の戦略』(東洋経済新報社)、『デジタル時代の経営戦略』(共編著、メディアセレクト)、『CIOのための情報・経営戦略』(共編著、中央経済社)など著書多数。ブログ「ITと経営」

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好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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