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森信茂樹の目覚めよ!納税者

過去の事例に学ぶ――TPPと焼酎
内外税率格差是正で大幅増税に
逆風をはねのけ輸入ウイスキーを撃破

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第14回】 2011年11月7日
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 私は国際経済の専門家ではないので、TPP(環太平洋経済連携協定)により日本がどの程度の損害を受けるのか、利益はどの程度なのか、定量的に計測することはできない。したがって、農水省と経産省のそれぞれの経済利益・不利益の試算について、どちらが正しいと断定することはできない。

 しかし、政権を揺るがす大騒ぎ(?)となっているこの議論には、なにがしか参加したい。そこで、自ら経験した身近な出来事を紹介して、この問題の判断に少しでも寄与できればと考えた。将来起きることを予測するより、過去に起きたことを検証することのほうが、判断する材料として説得力があると思われるからだ。ここで取り上げるのは、今やアルコール飲料の主役の一人となった「焼酎」である。

焼酎とウイスキーの税率格差問題

 私が大蔵省(当時)で間接税の担当課長をしていたある時、EUから一枚のFAXが届いた。そこには、「日本の焼酎の税金が、同じもの(あるいは競合するもの)であるウイスキーと比べて格段に低いが、これは内外無差別を定めるWTO(世界貿易機関)のルール違反であるので、協議を行いたい」という内容が記されていた。

 当時の焼酎乙(いわゆる九州・沖縄地区の焼酎)の税金は、度数あたり換算で、ウイスキーの6分の1の水準で、これが日本のウイスキー消費の伸びない原因である、同じもの・競合するものには同じ課税を、というWTOのルールに反する、ということであった。内外税率格差が、焼酎業界を保護しているという論理である。

 結局、2国間協議でもまとまらず、その後米国やカナダも参加して、日本初のWTOパネル設置となり、そらから2年以上続く議論・交渉の幕開けとなったのである。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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