現代人の健康を左右する
インスリンの役割とは?

 それでは、なぜ食後血糖上昇とインスリンの過剰分泌がさまざまな病気や症状を引き起こすのでしょうか? それを説明するために、まずはインスリンの役割について簡単に触れておきます。

 糖尿人はよくご存じでしょうが、インスリンはすい臓のランゲルハンス島という部分にあるβ細胞でつくられている物質で、血液中のブドウ糖の量(血糖値)を調整するのが主な役割です。体内で唯一、血糖値を下げる働きをしています。インスリンには24時間継続して少量出続けている「基礎分泌」と、糖質を摂って一時的に血糖値が上がったときに出る「追加分泌」の2種類があります。

 これでわかるのは、何も食べていないときでも、人体には少量のインスリンが必要ということです。このインスリンの基礎分泌がなくなると、人体のほとんどの組織ではエネルギー代謝がまともに行えなくなってしまいます。

 そして、食事などで糖質を摂ると、血液中のブドウ糖の量が増えるので、インスリンも増やさなければなりません。そのためにインスリンを余計に分泌することを追加分泌と呼びます。

 追加分泌されたインスリンは、血液中のブドウ糖を骨格筋や心筋などの細胞内に取り込み、エネルギー源として使えるようにします。またインスリンは、血液中の余分なブドウ糖を体脂肪に変える働きもしています。一方でブドウ糖を燃やし、他方でブドウ糖を体脂肪に変えることで、インスリンは血液中のブドウ糖の量を減らすのです

 このようにインスリンは、生きていくために欠かせないホルモンで、その分泌を担っているのがすい臓のβ細胞なのです。糖尿病というのは、このインスリンの作用不足によって血糖値が高くなる病気です。

生活習慣病の元凶!
「ブドウ糖ミニスパイク」とは?

 さて、空腹時血糖と食後血糖の差が大きいことを「ブドウ糖スパイク」と言います。世界中の糖尿病専門医の間で定着している言葉ですが、この差が大きいほど体内の血管内皮はリアルタイムで傷つけられ、将来の動脈硬化や心筋梗塞のリスクとなります。