【図1】は、2型糖尿病女性の血糖値を示したものです。早朝の空腹時血糖値は88㎎/dlですが、通常の糖尿病食で食パン2枚を食べた2時間後には321に跳ね上がっており、233も上昇しています。

 血糖値の正常値は、空腹時で110未満、食後2時間で140未満なので、この女性の食後血糖値が急激に上昇していることがわかります。このような人は、普通の健康診断では空腹時血糖値だけを検査して正常と見なされてしまいますから、注意が必要です。一方、糖質制限食ならまったくスパイクなしです。

通常の糖尿病食では、早朝の空腹時血糖値88mgから朝食後2時間で321mgへと急上昇している。一方、糖質制限食ではほとんど上昇はみられない。

 また、正常人でも、白米や白いパンなど精製された炭水化物を1人前食べると、食後血糖値は60〜70も上昇することがあります。私はこれを「ブドウ糖ミニスパイク」と名づけました。糖尿病患者におけるブドウ糖スパイクほど大きな変動はないものの、人体に少なからず害を与えている可能性が高いからです。むしろ私は、このミニスパイクこそが、肥満やメタボ、そして生活習慣病の元凶と考えています

 例えば、正常人が精製炭水化物を食べた場合と、未精製の炭水化物を食べた場合を比べると、血糖値の上がり方は明らかに違います。また、脂質・タンパク質を摂っても血糖値は上がりません。

【図2】は、正常人の女子大生が白米1人前を食べたときの血糖値と、焼き肉1人前を食べたときの血糖値を比べたものです。白米のときは、空腹時100㎎から食後1時間で165まで上昇してミニスパイクを起こしていますが、焼き肉のときはまったくスパイクなしです。

白米では空腹時100mgから食後1時間で165mgまで血糖値が急上昇してミニスパイクが起きているが、焼き肉ではまったく起きていない。

ここで重要なのは、1日に何回も糖質を摂ると、そのたびにミニスパイクが起きるということですそして、ミニスパイクのたびにインスリンが大量に追加分泌されて、代謝が乱れます。基礎分泌の数倍から30倍ものインスリンが追加分泌されますから、人体にとっては救急車の出動に等しい緊急事態といえるでしょう。血糖値が180を超えるとリアルタイムで血管内皮が傷つけられるので、すい臓のβ細胞はこの緊急事態を何とかおさめようと一生懸命にインスリンを分泌するわけです。