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今やアートもネットで“買う”時代!?
超セレブが出資する招待制サイト
「Art.sy(アーツィー)」の正体

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第170回】 2011年11月9日
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 不景気で世の中が一応に冴えないというのに、そんなことはまるで他人事とでも言わんばかりに多額の金が動いている分野がある。アートの世界だ。ヨーロッパやアメリカでは依然として大型のアートフェアが開かれて大勢の関係者が押し寄せ、そこで新進作家の作品が売買される。また、遺跡級の古代ものや有名な現代芸術作家の絵画などは、依然として何百万ドルという値段が付けられて、アート・コレクターたちの内輪で取引されている。

 さて、この分野に目をつけた新しいスタートアップ(新興企業)がいくつもできているのだが、その中でもことに注目を集めているのが「Art.sy(アーツィー)」というサイトである。

 注目を集めている理由は、これに出資したりアドバイザーとなったりしている人々のセレブぶりだ。グーグル会長のエリック・シュミット、ニューズ・コープ会長ルパート・マードックの中国人妻ウェンディー・マードック、ツイッター創設者兼CEO(最高経営責任者)のジャック・ドーシー、有名なベンチャー・キャピタル会社アクセル・パートナーズのジム・ブロイヤー、ペイパルの前CEOで現在は投資家のピーター・シール、ロシア人ビリオネアのパートナーでギャラリー経営者のダーシャ・ズコーヴァらだ。

 このきらめくような面々からこれまで740万ドルの資金を集めて、11月7日にスタートしたアーツィーは、だが、今サイトに行ってもすぐに中身が見られるわけではない。ここは「招待制」。したがって「招待お願い」を申請して、アクセスが認められた人間だけにしか、サイトの扉は開かないのだ。

 アーツィーを創設したのは、カーター・クリーブランド。クリーブランドは小さい頃から父親に連れられて、展覧会やギャラリーを見て回ったアート好き。まだプリンストン大学のコンピュータ・サイエンス学部の学生だった2008年に、アーティストやキュレーター、ディーラー、学者などの力を得てアーツィーを作った。その背後にあるのは、「アート・ゲノム・プロジェクト」というしくみである。

 このアート・ゲノム・プロジェクトは、いわばアート作品にある特徴を多数の変数に分解して検索可能にするというアルゴリズムだ。たとえば、あるコレクターがひとつの作品のファンだったとすると、その人が他にどんな作品に関心を持ちそうかをそのアルゴリズムがはじき出し、現在市場に出ている作品の中から探し出してくれるのである。その変数に含まれるのは、アーティスト名、時代、作風、テーマなど200前後の要素だという。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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