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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

オリンパスが損失隠しを認め、
浮かび上がったバブルの亡霊

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第69回】 2011年11月10日
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英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週もオリンパス問題です。光学機器メーカーのオリンパスがバブル時代の証券投資で生じた損失を隠していたと発表したせいで、「バブルの亡霊」のようなものがボウッと浮かび上がったような不穏な感覚に襲われています。カメラを構えて、ほらそこに。(gooニュース 加藤祐子)

イギリス人社長の正しさが
証明され英メディアは

 光学機器メーカーのオリンパスが8日午前、「過去の損失計上先送りに関するお知らせ」というプレスリリース(PDF)を出して、英ジャイラスと国内3社の買収資金は「複数のファンドを通す等の方法により、損失計上先送りによる投資有価証券等の含み損を解消するためなどに利用されていたことが判明いたしました」と発表しました。そして同日午後には新社長が記者会見で、「大変不適切な処理をしてきたことは事実」と謝罪。疑惑の取引への関与を認めた副社長が解任されました。

 ウッドフォード元社長にとっては「vindication」だと。訳しにくい言葉ですが、「This is vindication for him」という言い方や、「He has been vindicated (正しさが証明された、汚名がそそがれた、名誉回復)」という言い方をします。ニュアンスとしては「やっぱり! そらみろ!」的な達成感、最近の和製英語で言うところの「リベンジを果たした」感が伴います(英語の「revenge」は「復讐」なので、ニュアンスがかなり違います)。

 保守的でナショナリストな英紙『デイリー・メール』も、「イギリス人社長が調べたかった10億ポンド詐欺をオリンパスがついに認め、クビにされた社長はvindicationを得た」と。

 『デイリー・メール』ほど保守的でもナショナリストでもないBBCも、この「vindication」という言葉をニュース紹介の冒頭で使っていました。もっともキャスターはウッドフォード氏に対して「This must be bitter for you(あなたにとって苦々しい話でしょうね)」と、「そらみろ、ですよね!」よりはトーンダウンした聴き方をしていたのが、とてもBBCらしいと思ったのですが。そして質問に対してウッドフォード氏は、「私のことはどうでもよくて、何よりのオリンパスの社員4万4000人のことが心配です」と訴えていました。「オリンパスには未来がありますか?」と尋ねられて、「オリンパスには未来があります。とてもいい製品を持っている。取締役会が会社のガンだったんです」とも言っていました。

 また英紙『フィナンシャル・タイムズ』のルイーズ・ルーカス記者もウッドフォード氏のインタビューの冒頭で「So, Mr. Woodford, vindication」と。「ウッドフォードさん、正しいと証明されましたね」と実に満足気に(同じルーカス記者は、解任され帰国した直後のウッドフォード氏にもこうして取材してします)。そしてウッドフォード氏は、高山社長をはじめ取締役たちが何も知らなかったというのは「馬鹿げている」と批判し、「オリンパスに戻る気はありますか?」との問いには「もしそれが株主たちの希望することなら、戻る用意はあります」と答えています。「あなたは英雄ですか?」との質問には、「本当の英雄は、『ファクタ』誌に内情を暴露した人です」とも。

 確かに。そもそも、オリンパスの買収問題を今年7月に最初に報じたのは、日本の雑誌『ファクタ』でした。そして、ウッドフォード氏が10月14日に解任された際に、「経営手法の違い、文化の違い」というオリンパス側の説明ではなく、買収の問題を糾弾する社長側の話を最初に伝えたのは、英紙『フィナンシャル・タイムズ』でした。

 出だしで遅れた感のある国内大手メディアでしたが、社長解任後の株価急落などについて責任を取る形で菊川剛会長が辞任したのを受けて、報道が拡大。今月7日発売の『週刊朝日』は、「オリンパス騒動発端は経営陣総ぐるみの損失隠し疑惑」という記事を掲載しました。財テク失敗による巨額損失隠しを「飛ばし」と言われる手法で90年代からやっていたという内容です。当時すでに飛ばしや損失補填が社会問題化していたが(たとえば巨額の簿外債務を抱えていた山一証券は1997年に自主廃業)、ギリギリ違法ではないという解釈で行われていたのだと。

 同じ7日夜にはロイター通信が日本語版で、「オリンパス買収仲介者は80年代から関係、「損失先送り」に関与=関係筋」という記事を配信。「2007年の英社買収で巨額の手数料を受け取っていた投資助言会社の中心人物が、1980年代から同社と関係を持ち、バブル崩壊期に同社の「損失先送り」処理に関与していたとみられることが、関係者への取材で明らかになった」と、この中心人物たちの名前を挙げています(2人の名前は米紙『ニューヨーク・タイムズ』も10月23日付で指摘)。

 そして翌朝8日になってオリンパスは上述のように、損失計上先送りを発表。それを受けてロイターの英語版は、損失先送りなどについてロイター通信が質問した後、オリンパスは損失隠しについて発表したのだと書いています。

 さらに高山社長の会見を受けてロイターも、オリンパスの今回の発表は、問題の支払いを追及して解任されたウッドフォード氏を「vindicate」するように見える、と。今回の発表によってオリンパス幹部や監査担当が粉飾決算などの罪で刑事訴追される可能性も出てきたし、株主代表訴訟が提起される可能性もあるので、会社の未来が問われているとも書いています。「当初、大半の国内メディアはほとんど気にもとめなかった」オリンパス問題は、1997年の山一証券破綻に至る一連の証券スキャンダル以来、日本で発覚した最大の企業不祥事だとも。「オリンパスは企業社会のお手本だったはずなのに」というIR(投資家向け広報)コンサルタントのコメントも紹介されています。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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