喧嘩するくらいのやる気が無いと、いいものは生まれない

朝倉:前回に話題に出た給与をリセットした話もそうですが、メンバーの考えとは異なる大胆な意思決定ってハレーションを起こすことですよね。日本の会社では、全員で合意して進めていくマネジメントスタイルが良しとされていると感じることがままありますが、その中で生じたハレーションをかいくぐるコツみたいなものはあるんですか?

森川:喧嘩するくらいやる気が無いといいものって生まれないと思っていたので、むしろ敢えてハレーションを起こすようにしていたんです。みんながそこそこ仲良くしてるようなチームではいいものは作れないので、そのハレーションが生まれた中で生き残れるのか生き残れないのか、それを見て社員を評価するようなところはあります。

 昔の日本的な考え方では、何か成功したらそれをフォーマット化して低コストで回すような組織を作って教育するっていうの当たり前でした。でも今は事業環境の回転がすごく速いので、そういうやり方に慣れてしまった人だと、次のフォーマットに合わせることができない。特にITの場合はフォーマット化されたものを回すだけの人はもういらなくて、自分でフォーマットを作るくらいの人達が重要になっています。フォーマットを回すのが好きな人は辞めてもらうか、子会社でやってもらうか。そういうふうにしてましたね。

 変わらなければいけないところで変われるかどうかが重要なんだと思います。LINE時代の話をすると、成長のスピードが最初は何百%だったのが、50%になって、20%、15%となると、社員たちはそれでも満足してしまうというか。会社が成長して、綺麗なオフィスに移って、福利厚生もしっかりして、安定してくると、そこからさらにまた成長速度を上げて行くというのがけっこう大変なわけですよ。そこからさらに上げるのに、退職率を高めたりとか、創業メンバーの役員を変えたり、事業を引っ張るタイプとリスクマネジメントするタイプをはっきり分けてそのバランスを取ったり、経営のやり方も変わって行きました。

朝倉:冒頭に経営者が情に流されて失敗することが多いという話がありましたが、C Channelはゼロから手塩にかけて育てた事業だから、その過程で森川さん自身が情にほだされてしまうことも起き得ると思うんですが、情に流されないために何か意識していることはありますか?

森川:子育てに近いですかね。子どもも赤ちゃんのときは放置すると病気になったりしますよね。事業も最初は面倒を見て、社員とも近い距離でお酒を飲んだりして、自立してきたら突き放すというか、少し距離を置くようにしています。とにかく若い女性向けの事業なので、おじさんがこうだって言っても説得力がないじゃないですか。それに事業をやる人の感覚って普通の人の感覚から離れていると思うので、一般的な人の意見をなるべく尊重するようにしてますね。

朝倉:今は創業社長として子育てに近い感覚で組織に接しているとのことですが、前職ではいわば雇われ社長でしたよね。そこでの影響力の違いを感じたりすることはありますか?

森川:あまりないですし、そうならないようにしています。今の会社でも、鶴の一声みたいなオーナー的な振る舞いはしません。僕が社員だったらそういう会社では働きたくないというのもありますし。ただ、いざという時は力を使って変えていくというバランスは大事にしてます。

*次回【森川亮さんに聞く Vol.3】成功体験は捨て去ろう。会社の「らしさ」が弱みになるに続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年9月12日に掲載された内容です。