R&Dと製造を垂直統合。日本向け製品を開発しやすい体制が確立
“ロボット掃除機の代名詞”といえるほど抜群の知名度を誇る、アイロボットの「ルンバ」。ところが2020年以降、後発の中国勢とのシェア争いが激しさを増し、25年12月には、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請した。
世界中のユーザーや市場関係者の誰もが、ルンバの行く末を案じる出来事だったが、わずか1カ月後の26年1月、アイロボットは早くも復活の兆しを見せる。ルンバの受託生産を行っていたロボット掃除機メーカーであるPICEA(パイシア)と経営統合したのだ。
「かつてのアイロボットは、製品のマーケティングとR&D(研究・開発)だけに特化し、製造は全て外部委託していました。中でもパイシアは最大の製造パートナーだったのですが、その製造機能と “垂直統合”することで、開発したばかりの製品を迅速に大量生産できる体制や、最適なコストで提供できる競争力を手に入れたのです」
そう語るのは、アイロボットの日本法人、アイロボットジャパンの山田毅代表執行役員社長だ。
アイロボットジャパン 代表執行役員社長 山田 毅 氏
パイシアは、ルンバ以外にも数多くのロボット掃除機を受託製造してきたため、最新の売れ筋モデルに関する知見や技術も蓄積している。そうした知見と生産能力によって、一気に世界トップシェアの座に返り咲こうというのが、経営統合に至ったアイロボットの狙いだ。
この統合は、アイロボットジャパンにとっても、長年の課題を解消する転機となった。日本の住環境やユーザーのニーズに徹底的に寄り添う「日本向けモデル」の開発を、一気に加速させられる仕組みを手に入れたからだ。
「これまでも、日本の家庭で求められる機能やスペックを米国のR&D部門に伝え、新製品の開発に反映してもらうことはありました。しかし、世界中で数百万台のロボット掃除機を販売するビジネスなので、どうしても一部市場向けの対応には限定的にならざるを得ませんでした。けれども、競合他社とのシェア争いが激しさを増す中で、もっと差別化できる要素を打ち出していく必要があると、常々感じていました」(山田社長)
垂直統合によって、これまで米国本社のR&D部門を介するしかなかった製品開発のプロセスが一変した。製造を担当するパイシアへ直接リクエストできるようになり、日本市場に最適化した製品をスピーディーにリリースできる体制が整ったのだ。
「日本向けの製品開発を長年にわたり米国本社に求め続けてきたアイロボットジャパンにとって、願ってもない変化でした。これを機に、われわれは日本オリジナルのルンバを積極的に企画・販売していく戦略を打ち出したのです」と山田社長は明かす。
従来の約2分の1(*1)サイズ! 日本向けの「Roomba Mini」が大ヒット
“日本向けルンバ”の第1弾として、アイロボットジャパンが26年2月に発売したのが、「Roomba Mini」(以下、ルンバ ミニ)だ。これが、飛ぶように売れている。
「現在、日本のロボット掃除機市場においてルンバ ミニだけで約30%のシェアを占めており、われわれの事前予想を大きく上回るヒット商品となっています。あまりの人気で欠品状態が続いていますが、欠品さえなければ、シェア50%もあり得たかもしれません」と山田社長は残念そうに笑う。
なぜ、そこまでヒットしているのか? 答えは至ってシンプル。日本の消費者がロボット掃除機を「買わない理由」を徹底研究し、それを覆す製品として開発したからだ。
「日本の消費者がルンバを買わない最大の理由は、『大き過ぎる』という感覚です。日本の住宅は諸外国と比較して狭いので、サイズの大きさが普及の妨げになっていることは否めませんでした。そこで、吸引力はそのままに、モップによる水拭きなどの複雑な機能をあえて取り払って、サイズを極力小さくしました」(山田社長)
写真一番奥がルンバ ミニ。片手でも持ち運べるほどのコンパクトなサイズ感だ
その名の通り、直径は245mm、体積は従来のほぼ2分の1(*1)という「ミニ」サイズにしたことが、爆発的なヒットにつながったようだ。
ルンバ ミニの大ヒットを受け、アイロボットジャパンは今後も“日本向けルンバ”の新製品をリリースしていく方針を打ち出した。
5月には、早くも第2弾となる「Roomba Plus 515 Combo」(以下、ルンバ515)を発売している。
ルンバ515は、旧モデルの「Roomba Plus 505 Combo」(以下、ルンバ505)よりも体積において46%(*2)も小型化。直径は一回り小さく、しかも、かなり薄い。その上、吸引力は、ルンバ505の3倍だ。
左が旧モデルのルンバ505、右が最新のルンバ515。直径は約5cmも小型化
「従来のルンバ505の高さは約10.6cmですが、ルンバ515は約8.4cmとかなり低くしました。それにより、キッチンの蹴込みなどにも入り込めるようになりました」(山田社長)
蹴込みとは、システムキッチンなどで足の爪先が当たる所に設けるへこみのことだ。その高さは10cmほどしかなく、従来のルンバでは入り込めなかったが、ルンバ515なら問題なく入れる。
左が旧モデルのルンバ505、右が最新のルンバ515。2cm以上も薄くなった
サイズを小さく、薄くしたのは、日本の消費者がロボット掃除機を「買わない」もう一つの理由に応えるためでもある。
「日本のお客さまがルンバに対して抱かれているもう一つの課題は、『丸く大きな体では、部屋の隅まできれいにするのは無理ではないか?』というものです。それを覆すため、サイズにこだわり、部屋の隅まできれいにできる製品を目指しました」と山田社長は説明する。
ルンバ515は小型化だけにとどまらず、水拭き用の大型円形パッドと、ほこりやごみを取るエッジクリーニングブラシがルンバ本体の外にまで届く仕様になっている。
これにより、部屋の隅まできれいに掃除できるようになり、丸く掃除されて残った隅の汚れを、ユーザーが自分の手で掃除する手間はかなり減った。
可動式ブラシと外側に伸びるモップが、部屋の隅まで掃除する
「欧米のユーザーは、ロボット掃除機で部屋の90%以上がきれいになれば良しとしますが、日本のお客さまは隅々まできれいにしてくれることを望みます。それを無理やり“グローバルスタンダード”に寄せようとするのではなく、われわれは日本のお客さまの気持ちにしっかり寄り添っていきたい。それが、世界市場向けに同じモデルを大量生産する競合他社との差別化点にもなると思っています」と山田社長は語る。
製品作りだけでなく、「サービス」でも日本の消費者に寄り添う
日本の消費者に徹底的に向き合う姿勢は、製品作りだけでなく、サービスにも及んでいる。
アイロボットジャパンは、日本のユーザー向けに、「ルンバプレミアム特典」というサービスの提供を開始したのだ。特典の一つとして、通常1年のメーカー保証期間を3年に延長した。
「1台数万円から十数万円の製品をご購入いただくのですから、安心してご利用いただけるように、保証期間を延長しました」と山田社長は説明する。
ルンバプレミアム特典は、ルンバ515と「Roomba Max」シリーズの購入特典
さらに、ルンバプレミアム特典には、ユーザー専用の電話によるサポートサービスも含まれている。最近では、AIやチャットボットによる問い合わせ対応が当たり前となりつつあるが、日本のユーザーに寄り添うため、あえてオペレーターによる電話対応にこだわった。
また、紙パックやブラシ、モップ、フィルター、洗剤などの消耗品をあらかじめ同梱することで、追加購入の手間も軽減し、定期的なメンテナンスにより長く使ってもらう環境を提供している。
まだ発売から半年もたっていないが、すでにルンバ515も好調な販売を記録しており、ルンバ ミニに続く大ヒット商品となる予感が強い。
日本のニーズを研究し尽くした製品が相次いでリリースされたことは、消費者のロボット掃除機に対する先入観を大きく覆し、普及率を一段高めるきっかけになるかもしれない。
山田社長は、「欧米では全世帯の約20%に普及しているロボット掃除機ですが、日本ではまだ10%前後です。“掃除をアウトソースする”という生活スタイルの価値をより多くのお客さまに実感していただくため、これからも日本のニーズにかなった製品を次々と送り出していきたい。それによって、家族との大切な時間や仕事に専念できる時間がもっと充実することを願ってやみません」と語った。
「ルンバ515」が期間限定で3万円OFF! 8月28日から
全国の認定販売店およびアイロボット公式オンラインストアにて、26年8月28日から9月30日まで、ルンバ515が通常価格12万9800円(税込み)のところ、3万円OFFの9万9800円(税込み)で購入できるキャンペーンが実施される。同キャンペーンでは、「Roomba Mini Slim」や「Roomba Max 715 Vac」「Roomba Max 775 Combo」なども割引対象になる。
お得に購入できるこの機会に、ぜひ店頭で、日本の消費者への思いが詰まったルンバ515のこだわりをその目で確かめてほしい。
*1:Roomba 105 Combo ロボットとの体積での比較
*2:Roomba Plus 505 Combo ロボットとの体積での比較

