プロ野球とJリーグの両方で社長を務めた初めての男、藤井純一氏による集中連載もついに最終回。藤井氏が地域密着の指標としてもっとも重視していた観客増員をいかにして実現したのか? そして、その先に目指したものとは? 北海道日本ハムファイターズはこうして生まれ変わった――。

アイデア満載のチケット

 最初はさかんに発破をかけないと動かない社員たちだったが、取り組みかたが変わると一気に変貌するものである。

 若い社員からは様々なアイデアが飛び出した。特にユニークなのが、チケットの販売方法だった。先に述べたとおり、ドームには様々な観客が来る。年齢層も幅広く、生活スタイルもそれに伴うニーズも多岐にわたっている。それぞれの層に合わせたサービスの細分化が必要だった。

 まず、地域の人々に喜んでもらうことを主眼として生まれたのが、その名も「なまらチケット」。北海道の言葉で「すごいチケット」という意味である。居住地、あるいは勤務先のエリアによって、日替わりで良い席に格安で座れるしくみになっている。たとえば「北広島市・恵庭市民デー」には、市民はなまらチケットによって1500円でSS席に、そこが満席になればS席に、と優先的に良い席に陣取れる。この調子で、翌日は「江別市・石狩市デー」、その翌日は「札幌市豊平区・手稲区デー」と日替わりでエリアが変わっていく。様々な地域の人々に野球観戦を楽しんでいただきたいがためのシステムだ。

 働く人向けに考案されたのが「730(ナナサンマル)チケット」。19時半以降に売り出される半額チケットである。大多数のビジネスマンは、18時のプレイボールまでに球場に来ることはできない。しかし19時台であれば、十分に間に合う。会社帰りに「今から野球を見に行こう!」と思ってもらえるきっかけ作りを目指したサービスだ。

 好評を得たこのチケットは、2008年から「715(ナナイチゴ)チケット」と改名し、開始時間を19時15分に前倒しした。試合の短時間化が著しくなったためである。特にダルビッシュの登板日は試合運びが早く、730チケットで入ると試合はすでに中盤戦、来たかと思えばあっという間に終わってしまう、といったこともあった。そこで開始時間を早め、よりたっぷり、しかもお得に観戦できるようにした。

 曜日ごとに対象を変えるサービスも導入した。「シニア&学生デー」、「レディースデー」、「ファンクラブデー」、「メンズデー」と日替わりで、チケットを半額にする。この中で、とくに人気が高いのはレディースデー。というのも、ファイターズは新庄・ダルビッシュの入団以来、非常に女性ファンが多いのである。現在も、来場者の55%は女性が占めている。