だが、有効求人倍率は分子が求人数、分母が求職者数であるが、分子の求人数が伸びているのは、非正規雇用やパートが中心であることに変わりはない。問題は、分母の求職者数が一貫して減少していることにある。

 生産人口年齢(15~64歳)は、1995年の約8700万人をピークに減少に転じ、2017年には約7600万人になった。約20年間で1000万人も減ったが、最近は団塊の世代が次々と65歳を超えたため減少幅が拡大している。
実際、2012年の8017万人から約4年間で388万人も減り、年平均97万人もの減少を記録している。

 むしろ、有効求人倍率の急上昇は少子高齢化の深刻さを示しているのであって、アベノミクスの成果ではないのである。

企業自体が売買の対象になる資本主義
株価至上主義の経営加速

 では、なぜトリクルダウンが起きないのだろうか。その背景には、1990年代以降、席巻したグローバリズムによって、金融主導の「金融資本主義」とでも呼ぶべきものに資本主義が変質したことが上げられる。「金融資本主義」の特徴の一つは、景気循環をバブルとその崩壊を繰り返す「バブル循環」にしたこと、いま一つは、企業自体が売買の対象となったことである。

 とくに、1990年代末に導入された「国際会計基準」によって、企業の売買価値を表わすようなルールに改められたことが大きい。多額のフリーキャッシュフローを持つことが重視され、企業が保有する株式や不動産などの資産を市場価格で評価する時価会計主義が導入されるようになった。そして、企業が買収する側に回るには、自社の株式時価総額を高めることが求められる。そのためには、内部留保をため込む、配当金を出す、自社株買いによって一株当たりの利益率を上げることが優先される。

「選択と集中」と称して不採算分門は切り売りされ、自社に足りない部門は自ら育てるのではなく内部留保をもとに買収するという短期利益優先の米国型経営が普及してきた。