環境省が今年発表したデータによると、我が国におけるゴミの排出量は、2009年度で4625万トンに上るとされる。それに対して、最終処分場の数は減少傾向にあるという。
とりわけ関東・中部圏では「最終処分場の確保が十分にできず、域外に廃棄物が移動し、最終処分が広域化」している。厳しい財政状態にある自治体にとって、ゴミ問題はそれでも対処していかなくてはならない喫緊の課題だ。
そんなか「世界中のゴミを拾い尽くし、世界をきれいにする」ことを目的としたソーシャルウェブサービスが注目を集めている。それが「PIRIKA」(ピリカ)だ。
参加方法は簡単で、専用のスマートフォンアプリを使ってゴミ拾い時の様子を撮影し、投稿するだけでよい。写真は、ネット上の地図やタイムラインにリアルタイムに反映される仕組みだ。投稿されるゴミの種類は、タバコの吸い殻やペットボトル、紙屑など実に様々で、改めて街中のゴミの多さを実感させてくれる。『PIRIKA』では、こうした行為が「地球環境への良い連鎖」となって広がっていくことを目指すという。
実際に使用してみるとわかるが、自身の善意が世界に向けて発信されることは、案外と嬉しいものである。また、「ゴミ拾い」というシンプルな目的でつながっているせいか、ユーザー同士の共感度は一般のソーシャルサービスと比べて高いように感じる。一方で、世界各地から投稿が届いている点は、国境を簡単に越えることのできるソーシャルサービスならではの強みといえるだろう。
さらに、11月公開の最新バージョンでは、「ありがとう」といった謝意を表したり、互いの投稿にコメントできる機能などを追加。「ゴミ拾い」という行為に、いかにユーザーを惹きつけるかが大きなポイントなだけに、「今はひたすらアプリの改善に力を注いでいます」(「PIRIKA」代表・小嶌不二夫氏)ということである。
ただし「PIRIKA」は、必ずしも慈善事業に取り組もうとしているわけではない。その根底には、「環境を良くするという行為を、人間がやりたくてしょうがない仕事やサービスにしたい」(同氏)という理念がある。そのため今後は、企業ブランドとの提携、あるいは行政や地方自治体が企業に委託している公共地域の清掃業務を、格安で代替できるサービスとして提案していく予定だという。
「格段にコストの低い清掃方法を早急に見つけ出さなければ、いつか地球はゴミだらけになります。できるできないの問題ではなく、必ず解決策を見つけなくてはならないのです」(同氏)
世界中のゴミ問題に目を向けた場合、「PIRIKA」はビジネスを含めた様々な意味でのポテンシャルを秘めたサービスと言える。近い将来、「ピリカする」が「ゴミを拾う」という言葉と同義になる日もやってくるかもしれない。
(中島 駆)