これに対し、トランプ大統領は「時間は少ない。早く行動せねばならない」と反論したが、中国は耳を貸さなかった。その結果、米中両国は、国連制裁決議を含めた制裁を強化することで当面は同じ方向を見て進むことになりそうだが、外交関係者の多くは、いくら制裁を強化しても北朝鮮は核ミサイルを放棄しないと見ており、いずれ北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)を実戦配備したタイミングなどで溝が露呈するのではないかと見ている。

 また、日経新聞によれば、複数の外交筋の言葉として、中国は金正恩政権後など北朝鮮の「将来シナリオ」について、米側と協議することを拒み続けているようである。北朝鮮の耳に入り、暴発するのを恐れているからだ。中国が北朝鮮情勢に対し肯定的な役割を果たすためにはこうした議論は不可欠であり、可及的速やかに議論を開始してほしい。

 こうした状況もあって、トランプ大統領は28兆円もの商談がまとまったにもかかわらず、終始、仏長面だったという。習国家主席の演説では腕を組み、同氏をにらみつける場面もあり、会談での激しいやり取りをうかがわせた。

 中国でのもてなしは、世界遺産の故宮を貸し切っての「超国賓」級のものであった。トランプ大統領も、会談前日は終始上機嫌でツィッターにも投稿していたが、中国はこうしたもてなしにたけていることを理解すべきであった。ワシントンポスト紙は、「トランプ大統領は中国から譲歩を引き出したいと望んでいたが、共産党大会を経て権力基盤を固めた習国家主席は強かった」と報じている。

中国が変わらなければ
制裁をさらに強化するしかない

 トランプ大統領のアジア歴訪を受け、北朝鮮問題は今後どうなるのかと言えば、事態はますます流動的になったと思わざるを得ない。

 北朝鮮は、石炭増産や電力供給量の拡大など、自給自足に力を入れている。金正恩委員長も、9月からは農場や生産現場に足を運ぶ姿が相次ぎ伝えられている。しかし、「自立経済」の強化は、制裁を覚悟で核開発を進める意思の表れでもある。現にサイバー攻撃を多用するなど、核・ミサイル開発資金の確保に躍起となっている。

 北朝鮮はこの50日間ほど核・ミサイルによる挑発は控えているが、それは米軍の朝鮮半島集結など北朝鮮にとって危険な状態が続いているからであり、今後は核ミサイル実験を強化しても不思議ではない。