「やりがい搾取」の一方で
疑問を持たない社員たち

──幕張新都心店では、店長が真顔で「会社が倒産するかも知れない危機です」とスタッフに告げて、シフト時間を削るシーンもありました。

 これは豊洲店でも言ってました。どうやら閑散期にシフトを削るための常套句のようです。ビックロではたまたま、僕がいた期間はずっと繁忙期だったから聞かなかったけれど、閑散期になったら言っている可能性はあります。大ウソもいいところですけどね。

 ファーストリテイリングは業績だけ見れば優良企業なわけで、人件費を削らないと倒産するだなんてあり得ないでしょう?ただ、みんなの反応を見ていると、どうやら信じているみたいでした。逆に、こういうのを信じられない人は辞めていきます。「一緒に決算書読もうよ」って言いたかったですね、本当に。休憩室に置いてあった日経新聞はいつもまっさら。誰も読んでないんです。

「うちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたい」──とあるインタビューで柳井社長が言った言葉に応えるべく、横田氏は1年間の潜入取材を敢行した。

──忙しすぎて読むヒマがないんですかね。

 きっとそうでしょうね。ほかにも「なんで?」って言いたくなるような、おかしな話はいっぱいありました。店舗では週に1回、柳井社長の発言が載る「部長会議ニュース」が貼り出されるんです。僕は潜入中、欠かさずチェックしていましたが、柳井社長は「〜していただきたい」とオーダーを頻発します。でも、「一体どうやったら達成できるんだ」と首をかしげるような話が多かった。

 彼は人の2倍、3倍働け、そうすればバイトだって給料をうんと上げる、というようなことを言うけれど、現実として、ユニクロのバイトは4年働いてもたった20円しか時給が上がらないような仕事です。それなのに、バイトであってもプロ意識を持て、人の倍働けだなんて、「やりがい搾取」そのものです。

 バイトだけじゃなくて、社員だって大変です。僕が取材した限りでは、「店長クラスでも年収は400万円台が大半なんじゃないか」という話でした。しかも、本当に余裕なく働いています。外の世界を知らないと、これが当たり前だと思ってしまう。「やりがい搾取」の罠にまんまとハマってしまうんです。