ユニクロを覆う秘密主義に
ノーを突きつけたかった

──この本を読むだけで、頭痛がしてくるくらいに現場の疲弊感がひしひしと伝わってきましたが、よくこんな大変なルポをしようと思いましたね。

  僕は前著(「ユニクロ帝国の光と影」文藝春秋刊)の執筆時から、ユニクロを取材してきました。随分取材を申し込みましたよ。だけど、あまり受けてもらえないから、独自取材を中心に前著を書いたところ、名誉毀損で文藝春秋が訴えられました(14年に文春の勝訴が確定)。その後も決算会見すら出入り禁止になりました。

 あの会社は徹底的な秘密主義なんです。社員たちに取材をしようにも現役の人はもちろん、退職後の人も「守秘義務違反になる」と怯えて口が重い人が多い。クビになるんじゃないかとか、辞めた人でも訴えられるかもとか、恐怖があるんです。

 でもね、守秘義務って商品に関わるデザインとかパターンとか、そういうものを守るというのは分かるけれど、何でもかんでも守秘義務を盾に言動を縛るっていうのはおかしいでしょう?
 
 だったら僕が潜入取材をして記事を書いたらどうなるんだろう、本当に僕を懲戒解雇にできるの?と問うてみたかったんです。結果は、諭旨解雇でした。対応した人事もおっかなびっくりに見えましたよ。やっぱり簡単に人をクビになんてできない。こんだけ書いても、僕は懲戒免職にはならなかったんです。

──おかしなことに「ノー」を突きつけたかった、と。

 ユニクロでは、柳井さんの言うことは、どんなおかしなことであっても“絶対”なんですよ。「柳井教」なんじゃないかと言いたくなるくらい。僕は、それってヘンじゃない?って問いたかったんです。そして、社員や元社員にも「もっとしゃべろうよ。大丈夫だよ」と言いたかった。

 柳井さんには、「現場をもっと見ようよ」って言いたいですね。たとえば感謝祭で自らレジ打ちするなんて、僕はいいと思うけどなあ。どんなチラシをまくよりも集客効果もあるだろうし、現場を知るチャンスにもなるでしょう。

 柳井さんは新聞のインタビューなどで「勤務環境を改善した」と言っています。確かに良くなっている面もありますが、まだまだ道半ばです。僕が潜入した3店舗とも、社員はサービス残業をしていましたし。しかし、勤務記録には載せていなかったから、柳井さんの目には入らないのでしょう。

 残業時間が予定をオーバーしたら罰する、というようなやり方をすれば、現場は隠したりごまかしたりする方向にいってしまうのは当然です。「なぜオーバーしてしまったのか」、経営者は理由を現場に聞いて、効率化策を考えないと。これからもユニクロはウォッチしていきますよ。