日本財団が運営する公益コミュニティサイト「CANPAN」による「CANPAN CSR大賞2011」が発表された。今年で5回目となる同賞は審査委員会と一般生活者のインターネット投票により各賞が決定される。それだけに、日本社会のCSRに対する考え方、感じ方が現れやすいアワードであると考えられる。今回は、この受賞結果を分析しながら、社会的なCSRトレンドを考えてみたい。
まず同賞の概要だが、今回は審査委員会が大賞のノミネート企業を14社選出。選考にあたっては、3つの基準が設けられた。
1)東証一部上場の全企業を対象にアンケート調査を実施。回答を得られた企業を対象として、東日本大震災後のすぐれた取り組みについて「CANPANアドバイザー会議」で6社に選考。
2)被災地ですぐれた取り組みを行なう企業を、地元NPOのネットワーク、具体的には「いわて連携復興センター」「みやぎ連携復興センター」「ふくしま連携復興センター」から5社推薦。
3)コミュニケーションの観点から優れた取り組みを行なったと考えられる企業を、雑誌「オルタナ」から3社推薦。
いずれも、震災への取り組みが基準となっていて、これは当然であろう。今年の日本におけるCSRは東日本大震災とは無関係には語れない。
こうして選ばれた14社のCSR情報をネットにアップし、一般生活者がインターネット投票を行なった。今回の投票者数(有効投票数)は2万2890である。
以下、各賞の受賞企業と主な評価理由をご紹介する。
☆グランプリ=ヤマトホールディングス株式会社
評価点=震災復興支援として、宅急便一個につき10円の寄付を1年間継続することをいち早く決定した。グループ全体で約17万人の従業員全員が、震災復興支援のためのボランティア活動など、何らかの形で支援活動に関わる仕組みを作った。
☆準グランプリ(東証一部上場部門)=富士フイルム株式会社
評価点=被災地で海水や泥で汚れた写真を救う活動を支援する「写真救済プロジェクト」を立ち上げ、実施。社員やOBによるボランティアを集め、本業の技術を活かした取り組みを行なった。
☆準グランプリ(東北企業部門)=株式会社ファミリア
(筆者注:子供服販売を行っている神戸のファミリアとは無関係)
評価点=多賀城市と連携し、同市の草刈り業務のほか、農地の開墾に取り組み、雇用機会を作った。同社は、農業、林業、漁業に関する6次産業創出のためのコンサルティング事業や野菜直売・宅配事業・加工商品・サービス開発等を行なっている。これらの本業での経験を活かし、被災地の復興支援を行なっている。
☆コミュニケーション賞=株式会社フェリシモ
評価点=買い物をするごとにポイントが付与される「メリーしあわせ基金」による寄付集め(阪神大震災時にも実施し、約6年間で約4億円の寄付を集めた)。寄付先をお客様からのアンケートや社員有志のアイデアを元に決めた。東北の商品を販売するウェブサイトを開発し、間接的に復興支援に貢献した。
☆特別賞=株式会社八木澤商店
(1807年に岩手県陸前高田市で創業し、約200年にわたって醤油・味噌を製造してきた老舗企業)
評価点=自社も被災し事業を再開できない状況の中で、避難所等へ支援物資を届けるボランティア活動を展開。地域全体で復興するための、地元中小企業と連携した産業再生の取り組みを行なっている。