「人件費上昇」が日本経済にもたらす3つのメリットと1つの課題

人件費がいよいよ上昇

 巷間「人手不足」が語られるようになり、これに伴って至る所で人件費が上昇しているという。安定した企業の正社員の皆様は、まだご自身の収入増加を感じておられないかもしれないが、パートや派遣、アルバイトといった、いわゆる「非正規」で働いている人たちの時給は上昇している。

 例えば、物流が大きく動く年末の繁忙期に向けて、アマゾンは時給1850円、ヤマト運輸はなんと時給2000円で働き手を募るという。

 もともとアベノミクスとは、金融緩和で円安に誘導して→日本の労働力に対する国際価格を下げて日本の製品・サービスの競争力を増し→労働需要をタイトにして→賃金を上げて→マイルドな物価の上昇を実現する、といったストーリーを期待した「デフレ脱却対策」であった。

 ただしこうした過程では、まず、株式・不動産などの資産を持つ人と、労働市場で限界的なポジションにある人という、いわば貧富の“両端”からメリットが生じ、“中間層”に対するメリットはそもそも遅れてやってくるのが必然だった。

 デフレが進んだ過程で、企業が人件費のコストダウンを強く意識し、その中で増えた非正規雇用の労働者の待遇がまず改善しているわけだが、この層の労働需給をタイトに保つことによって、正規雇用の労働者にも賃金の改善が及んでくることが期待される。