確定拠出年金制度が導入されて10年。この制度は自分の運用次第で将来もらえる年金額が増減するというもの。ここ数年で急激に導入する企業が増え、すでに1万5000社が加入、「私には関係ない」と思っていても、近い将来、いやおうなしに投資と向き合うことになるかも…?
『「投資で失敗したくない」と思ったら、まず読む本』を発売(12月2日予定)する、独立系FPの深田晶恵さんの著書から、投資を始めるときに必ず知っておきたいことをご紹介します。

あなたの会社も将来、導入するかも!?
「確定拠出年金」について知っておこう

 さて第5回目は、加入者が400万人を突破した「確定拠出年金制度」について、将来泣かないために知っておきたいことを、解説しようと思います。

 確定拠出年金制度(企業型)とは、企業年金の一種です。会社が決まった額の退職金を支払うのではなく、毎月会社から渡される退職金の「元になるお金」を従業員自身が運用し、将来退職するときに自分で受け取るという制度。

 つまり、自分がどう運用するかで退職金の金額が変わるというものです。

 会社は預金商品や保険、投資信託など、複数の金融商品を用意し、その中から自分でどの商品で運用するかを選択します。個人の運用、商品の選択によって将来受け取る金額が違ってくるという、まさに「将来の年金は自己責任で運用しなければいけない制度」なのです。

 企業では、将来社員に支給する退職金のために積み立てをしています。10年ほど前まで、多くの企業では積立金の予定運用利回りを5.5%が保証としていました。そして、「確定給付型」といって、退職金として給付する金額は事前に「確定」している仕組みでした。

 仮に38年間勤めた場合、退職金が3000万円と定められている企業があったとします。38年後に5.5%の運用利回りで3000万円を毎月の用意するには、毎月1万9400円を会社が積み立てることになります。38年間の積立元本(会社が出したお金)は885万円で、残り2115万円は運用益として確保する計算です(実際には企業の積立額は毎月同額ではなく、20代、30代、40代と年齢が高くなるにしたがって、積立額が増えていく仕組みです。わかりやすく説明するために毎月同額としています)。

 退職金は3000万円、と事前に決定していますから、株式市場の低迷などで計算どおりの運用益が得られなければ、不足する分は会社が補填することになります。

 しかし、「確定拠出年金制度」は、自分の運用次第で額が変わるので不足ということがなく、最終的に個人がもらえる額が少なくなっても会社は補填する必要がありません。それもあって、この制度の加入者は右肩上がりで増加、ペースも急激に早くなっています。株式市場が低迷しているときは、導入企業が増えるようです。それはそうですね、企業にとって「確定給付」の制度は負担なはずですから。

深田晶恵(ふかた あきえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年生まれ。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特 定の金融機関に属さない独立系FP会社である生活設計塾クルーのメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じて「買い 手寄り」のマネー情報を発信している。15年間で受けた相談は3000件以上。「すぐに実行できるアドバイスを心がける」のをモットーとしている。日本経済新聞、日経WOMAN、日経ビジネスAssocie等でマネーコラムを連載中。
おもな著書に、『30代で知っておきたい「お金」の習慣』、
『住宅ローンはこうして借りなさい・改訂3版』、
『住宅ローンにだまされるな!住宅ローン見直し編』、
『災害時 絶対に知っておきたい「お金」と「保険」の知識(共著)』、
『生命保険はこうして選びなさい・新版(共著)」(いずれもダイヤモンド社)、『女子必読!幸せになるお金のバイブル』(日本経済新聞出版社)、『年金以前の「定年後のお金」の常識』(講談社)などがある。
所属先:(株)生活設計塾クルー http://www.fp-clue.com/
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