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自由民主党と国民民主党が掲げる名目GDP(国内総生産)1000兆円という経済目標。その達成には年平均で3.5~4.5%の成長が必要となるが、現在の潜在成長率や物価上昇率の動向から見て、実現は可能なのか。安倍内閣時代の600兆円目標が達成された背景や、近年の実質経済成長率の停滞も踏まえつつ、目標達成の可能性を検証する。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

安倍内閣の目標・名目GDP600兆円達成は
物価と統計変更の効果が大きい

 名目GDP(国内総生産)は1000兆円。自由民主党は2040年に、国民民主党は35年に達成することを参議院選挙の公約としている。

 これは24年の名目GDPである609兆円の1.6倍強となる。年間平均でどれくらいの経済成長をすれば達成できるのか。計算してみると、自民党の場合で3.5%、国民民主党の場合で4.5%の成長が必要になる。

 物価上昇も反映される名目ベースでの数値だから、物価がそれぞれ3.5~4.5%上昇すれば、実質の経済成長がゼロでも達成できる。

 このように名目値の目標は物価が上昇すれば達成の可能性が大きくなる。ただ、実質成長がゼロなら国民の暮らしは全く向上しない。こんな形での目標達成には全く意味がない。

 名目値でのGDP目標といえば、直近では15年に安倍内閣が打ち出した600兆円という目標がある。達成できたのは24年だ。目標を打ち出す前の14年の名目GDPは518兆円。10年で17%拡大したことになる。

 だが、実質ベースで見ると、拡大ペースは大きく減速する。14年の実質GDPは529兆円であるのに対し24年は557兆円。わずか5%増加したに過ぎない。

 名目と実質との格差からいえることは、目標達成には22年以降の物価上昇が大きく貢献しているということだ。また、18年から研究開発費がGDPに算入されることとなったこともプラスに作用した。

 こうした支援要因がなければ、いまだに600兆円の目標は達成されていなかっただろう。

 では、今回の1000兆円という目標の達成は現実的なものなのか。次ページでは、その可能性を検証する。