肉体労働で男性の仕事というイメージの強い宅配便の配達員。この職種で、佐川急便が女性スタッフを大幅増員することを決めた。
現在、佐川急便に勤務する女性従業員(正社員、準社員、契約社員)は、全体の14%で8000人だが、数年後には1万5000人にまで引き上げたいとしている。
背景には、宅配分野におけるネット通販の拡大がある。
企業間物流に対して、ネット通販など個人宅へ届ける宅配便は、荷物が小さく軽量で、女性でも持ち運びしやすいという。また、宅配の受け取りは7割が女性だ。特にネット通販では、一人暮らしの女性が仕事から帰宅後、夜間に受け取る機会が増えており、女性スタッフによる宅配で安心感につなげる狙いがある。
運送業界は、常に人材の確保に苦労しているという事情もある。これまでのような男性偏重の雇用を改めて、安定的な人材確保につなげたい。経営的にも宅配が集中する午前と夜間の4時間だけ勤務する宅配員が必要だが、正社員だけでは埋められない。ここにパート感覚での勤務を希望する主婦層を取り込みたいという。
佐川急便は宅配便の取り扱い増加に合わせて、小型のサービスセンターを増やしてきた。半径300~500m圏に宅配する拠点で、現在、全国397ヵ所にある。サービスセンターでは、配達員は大型トラックではなく、台車や自転車を利用して宅配に回っている。こうした拠点や配送方式の整備で、女性が働きやすい環境が整いつつあるという。
問題は、まだまだ「宅配員=男性」のイメージが濃いことだ。中途採用の募集をかけても応募してくるのは大半が男性。今期は、女性の配達員を1000人採用する計画だが、11月末時点で300人にとどまっている。枝中尚樹・執行役員人事部長は「このペースでは、女性従業員を計画の1万5000人にまで増やすのに20年かかってしまう」と頭を悩ませている。
計画通り女性スタッフを増やせるかどうか、まずは宅配員の仕事にまとわりがちな“大型トラックで重荷物を運ぶ”というイメージをいかに払しょくできるかにかかっているといえよう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)