『週刊ダイヤモンド』12月9日号の第一特集は「温泉 読んだら入りたくなるほっこり経済圏の秘密」です。みんなが大好きな温泉が実は今、全国各地で大盛り上がりで、とんでもないことになっているのです!

「天悠」最上階の露天風呂付き客室

 黒を基調にした重厚な雰囲気のロビー、高台の立地を生かした絶景露天風呂。総工費110億円を掛けた豪華な新築旅館が4月、鳴り物入りでオープンした。箱根の名門企業、藤田観光による箱根小涌園 天悠だ。

 1950年に箱根で創業した同社は、小涌谷エリアに持つ東京ドーム14個分もの敷地を再開発している。テーマは「大衆路線からの脱却」だ。従来の温泉テーマパークのユネッサンで遊んでから低~中価格帯の大型ホテルに泊まる客から、高単価を見込める外国人客やシニア層へのシフトを狙う。その挑戦の第1弾が天悠だった。

 ところが開業すると、「料理が出るのが遅過ぎる」「スタッフがあいさつもしない」など、ネットの口コミには厳しい意見が並んだ。

 天悠の平均客単価は1泊2食で3万円。それに見合うサービスを提供できなかったのは、「新人スタッフが多く、開業までに十分な現場トレーニングができなかったから」だと藤田観光幹部は振り返る。徹底的な改善を図り、口コミ評価はようやく目標に達しつつある。

 実は、同社は再開発の第2弾として客単価7万~8万円を目指した最高級宿の開発も進めている。

 背景には箱根の恵まれた環境がある。宿の開業に適した土地が少ない上に建築の規制もあり、土地や源泉の権利が高額で、熱海や鬼怒川に比べて新規参入のハードルが高い。低額な料金を訴求する伊東園ホテルズや大江戸温泉物語の2者は他の温泉地では増殖しているが、箱根では数えるほどだ。

 そんな環境にわんさと観光客が来る今だからこそ、すでに土地を持っていたり、何とか獲得して新規参入したりした各社の戦略は高級路線になるのだ。